こんにちは。日通総研では2018年10月にLINEを使ったドライバー運行管理ツール「どらたん」をリリースいたしました。既に「どらたん」を利用されている方、そしてまだ利用されていない方々にも有効に使っていただこうと、この「どらたん」の活用方法について、ブログを書いていこうと思います。
初回は、“「どらたん」を活用した集配先の荷待ち時間と附帯作業時間の把握”についてです。
1.荷待ち時間と附帯作業時間の把握が必要な理由とは?
まずは、荷待ち時間と附帯作業時間の把握の重要性について、その背景からお話しします。
背景としては、近年のドライバー長時間労働や運送事業者と荷主企業の取引関係の改善を促すことを目的とした、法律の改正があります。
国土交通省は、2017年年7月に、貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正し、トラックドライバーの荷待ち時間の乗務記録を義務付けました。待機時間の乗務記録の義務化、集荷地点での30分以上、到着・出発時刻の記録、集荷地点での荷役作業の開始終了時刻、荷役作業の内容の記録が義務付けとなっています※1。
さらに、2019年6月には、荷役作業の乗務記録が義務付けられました。荷役作業等を実施した場合に、「集貨地点等」、「荷役作業等の開始・終了時刻」、「荷役作業等の内容」、「これらについて荷主の確認が得られた場合はその旨・得られなかった場合はその旨」の記録が必要となりました※1。
その他にも、2017年11月には、標準貨物自動車運送約款が改正され、「運賃」と「料金」が別建てとなりました。積卸し時間、荷待ち時間(手待ち時間)、附帯作業が運賃とは別建ての「料金」として提示するよう求められています。さらに、2020年4月には、運送事業者が法令を遵守して持続的に事業を行っていくための参考となる運賃として、トラック運送業に係る「標準的な運賃」が告示されました。
これらの改正や告示、トラックドライバーの拘束時間に関する基準の遵守など安全面、労務面でのコンプライアンスの確保や、適正な運賃収受が目的とされており、荷主と運送事業者間における取引条件の改善が求められています。※2
※1 車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上のトラックに乗務した場合
※2 荷待ち時間の記録義務付けや標準貨物自動車運送約款の改正に関連する過去のブログはこちら
荷待ち時間とドライバーの長時間労働の解消
https://blog.nx-soken.co.jp/logistics/logitan-1710-02
標準運送約款が改正~適正な運賃収受に向けて~
https://blog.nx-soken.co.jp/logistics/logitan-1801-04
2.荷待ち時間と附帯作業時間を把握するといっても・・・課題があります
これらを背景として、運送事業者を中心とした物流関係者の課題は、ドライバーの運行と、様々な集配先における荷待ち時間や附帯作業といった時間を正確に把握することです。デジタコを使用している運送事業者も、現行のデジタコが運行記録だけで、乗務記録(運転日報)までは作成できない機種を使用している場合もあります。また、アナログのタコチャートを利用している車両も多く、正確な時間が把握できていない実態があります。
またそれ以外の課題として、デジタコでの作業の記録には、運転席でデジタコのボタンを押さなくてはなりません。車両から離れてしまうと、デジタコのボタンが押せないため、例えば附帯作業の中でも検品や棚入れなどの詳細な作業の時間が把握できないといったデメリットがあります。
現状では、印刷した運転日報にドライバーが手書きで記録しているという運送事業者が多いようです。これでは、集配先別に、さらには日別月別に、どのくらいの手待ちや附帯作業の時間が生じているのか、管理も難しくなります。ただ、法律を守るためだけに記録し、せっかくの記録をその後に役立てていないことになり、無駄な作業が発生しているだけとなります。
ドライバー労働環境の改善に向けた運行の改善、顧客への適正な運賃収受に向けたエビデンス作りのためも、ドライバーの正確な作業時間をデータ化し、把握しておくことは重要でしょう。
さらには、元請の物流事業者と協力会社間、荷主企業と運送事業者の関係者間等で、運行のデータを共有化することにより、互いにその後の改善に役立てていくにも有効だと思われます。
3.どらたんを活用して集配先の荷待ちと附帯作業の時間を記録してみましょう
以上の背景や課題を踏まえた、どらたんの活用方法をご案内しましょう。
(1)計測したい作業項目を設定する
<どらたんのスマホ画面と記録方法>
図はどらたんのスマホの画面です。記録の方法は、みなさんがお使いのLINEと同じように、LINEで「どらたん」とお友達になり、対話形式で記録していきます。画面上側がどらたんとの対話の記録画面で、下側が作業を記録していくためのパネルとなります。
まずは、どのような作業時間をデータとして把握するかです。どらたんでは、作業を「A運行」、「B荷役・附帯」、「Cその他」といった大きく3つに分類しパネルを分けています。
例えば、附帯作業は「B荷役・附帯」の分類に含まれています。「B荷役・附帯」のボタンを押すと、関連する作業項目が開かれます。
これから行う作業、例えば「手待ち(荷主都合)」をタップすると、タップした時刻から「手待ち(荷主都合)」の時間計測が開始になります。次の作業、例えば「荷卸し」をタップすると、それまでの「手待ち(荷主都合)」作業計測が終了し、次の作業である「荷卸し」の計測が始まります。
どらたんでは、作業項目を予めデフォルトで設定しています。簡易版と詳細版の2パターンを用意しており、選ぶことができます。例えば、簡易版では、附帯作業は「附帯作業」とひとくくりにしていますが、詳細版ではより細かい作業をデフォルトとして用意しています。デフォルトでは、下記の作業項目が設定されています。
詳細版の附帯作業(デフォルト):検収・検品/商品仕分け/ラップ巻き/棚入れ/はい作業/ラベル貼り/横持ち・縦持ち/その他附帯作業
これらのデフォルトで設定された作業項目は、下図のように、自由に編集したり、追加したりすることが可能です。また、位置情報、数値・メモ入力機能や質問機能を適宜組み合わせます。(位置情報、数値・メモ入力、質問機能については次項以降で紹介します)
特に、社内で既に共有されている、あらたに作業名作業項目名がある場合などには、それに合わせて編集することができます。
業種によっては、機械取り付け、廃棄、解体など、その他の附帯作業項目が多くあるかと思います。どらたんによって、これまで難しかった詳細な作業の記録を簡単に行うことができます。
<どらたん専用WEBにおける作業項目編集画面>
(2)位置情報機能を活用し、集配先を記録する
どらたんでは、その作業をどこで行ったのか、位置情報を付加して記録することができます。具体的には、作業(例えば、手待ち)を押すと、次にどらたんが位置情報を聞いてきます※3。地図を開くを押すと、マップが開きますので、現在地(住所)を取得します。
さらに、どらたんの専用WEBメニューで、あらかじめ主な集配先をマスタに登録しておけば、取得した住所から推測※4して、住所だけでなく、集配先の名称で記録することができます。これにより、住所だけでなく、集配先の名称で集計することができ、非常に楽になります。
※3 初期設定では、「手待ち」「積込み」「荷卸し」「休憩」を選択した場合に位置情報の送信を要求するようにしています。位置情報を記録したい作業項目は、どらたん専用WEBメニューで設定してください。
※4 推測はマスタの情報と半径200m以内となります。よって近くの道路で待機している場合などにも有効です。
(3)数値・メモ・質問機能を活用する
どらたんでは、位置情報の他に、数値・メモ情報、質問への回答情報を付加することができます。作業を押した後、付随して、どらたんから数値の入力を要求されますので、キーボードを表示して情報を入力します。
例えば、この数値機能を活用し、「積込み」「荷卸し」の荷役作業に関わる物量等を入力することができます。物量に応じてどのくらい荷役時間がかかっているのか目安の確認に役立てるとよいでしょう※5。
また、メモ機能の活用については、設定済み以外の附帯作業が発生し、該当する作業がボタン上にない場合に、「その他」の作業項目の補足として記録します※6。
その他にもメモ機能として、伝票番号などの記録に活用している事例もあります。カスタマイズして利用してみてください。
「顧客の了解をえられましたか」などの質問をすることによって、記録することができます。
※5 単位については設定できませんので、運用でこの作業を押したときには、トンや㎥、(パレットの)枚数などとするなどを決めておく必があります。単位が混在して記録が必要な場合などは、メモ機能で単位を入力し補足しておく方法もあります。
※6 初期設定では、「その他」を選択した場合にはメモの入力を要求するよう設定しています。
4.どらたんを活用して記録した作業データを集計してみましょう
つぎに、記録したデータの活用方法です。どらたんでは、LINEで記録したデータをどらたんの専用WEBで確認し、CSV形式でダウンロードすることができます。エクセルのピボットテーブルなどで集計して活用することができます。
さらにこのCSVファイルを当社が用意したエクセル形式の「分析ツール」に取り込むことで、各種レポートを作成することができます。現行のバージョンの分析ツールでは、①日別作業時間集計と②集配別作業集計の2つの集計レポートが用意されています。
①日別作業時間集計では、ドライバー別に日別の作業時間を一覧で確認することができます。各ドライバーの1日の1日の運行に関わる運転時間や荷役時間等の作業時間を把握することができます。
②集配別作業集計では、集配先別に手待ち・荷役・附帯作業時間をチェックできます。
ここでは、②集配別作業集計を見てみましょう(※見やすいように一部加工しています)。集配先別に発生した手待ち・荷役・附帯作業時間を確認できます。表側の項目がドライバー別と集配先名で、表頭の項目が各作業項目になります。ここでは、30分以上生じた作業を黄色に着色し、確認しています。
この集計から、手待ちや附帯作業が発生している集配先が数字として、はっきり示すことができます。荷主への料金交渉ですとか、長くかかっている荷待ちや附帯作業時間について改善を求める、ご協力いただくためのエビデンスとして活用することができると思います。
5.おわりに 改善には荷主企業との課題の共有化と協力も必要です
いかがでしたでしょうか。今回はどらたんの活用方法について、簡単にお話ししました。
手待ち時間や附帯作業時間の把握は、運送事業者だけでなく、荷主企業についても、今後自社の拠点でどの程度の手待ち時間や荷役時間が生じているのか、元受事業者についても、協力事業者が健全な運行が行えているのか把握しておく必要があるでしょう。ドライバー不足やドライバーの長時間労働の問題となっている現状では、企業としてドライバーの労働時間を解消することは今後必須です。さらには、これらが運賃に加え料金として反映するとなれば、自社の物流コストにも影響してきます。
法律も改正され、運送事業者は、このような機会を利用し、顧客との取引関係や既存の運用を見直せるチャンスとも言えます。また、改善には、運送事業者だけでなく荷主企業と双方で課題を共有化し、お互いの協力のもと、進められることが望ましくあります※7。ぜひ、どらたんを活用して見える化を図り、運行の改善に役立てていただければと思います。
※7 荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善については、厚生労働省から下記ガイドラインが示されています。ぜひご活用ください。
荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00014.html
どらたんホームページ:https://www.doratan.jp/
(この記事は2020年6月7日の情報をもとに書かれました。)