【Global Report】これってハラル?ノンハラル?
海外に行くと、あたりまえですが、「日本とは違う国なんだ、いろいろな文化があるな」と実感させられる場面に多く出くわします。宗教はそのうちのひとつであり、確固たる宗教観を持たない私からすると、教えが日常に根付いて習慣となっているイスラム教などは、未知の領域といえます。このような教えは、生きる根幹ともいえる「食生活」にも深く入り込んでおり、人々の嗜好にも大きな影響を及ぼしています。
最近、「ハラル」というキーワードを聞く機会が多くなってきました。これは、イスラム教で「許されたもの、合法」を意味する言葉です。「食」でいうと、「イスラム教徒が口にすることができるもの」を意味します。インバウンドでイスラム教徒の観光客が増えれば、飲食店はこうした事情に対応を迫られることになります。もともと、自然の食材はすべてハラルである前提なのですが、その中に不浄なもの、毒や中毒性があって体に良くないもの、などがあるため、そういうものは避けなさい、というのが教えの趣旨です。宗派や国によって厳格性に差はあるものの、避けるべきものの筆頭には、豚とアルコールがあげられます。
日本人にとってハラルはなじみの薄いものですが、イスラム教徒の多いインドネシアやマレーシアはもとより、東南アジア諸国では一般的であり、各企業もそれに対応しています。特に、加工食品に関しては、原料および製造工程がハラルであることを証明するためのハラル認証も普及しており、店頭でも認証マークを見かけます。何がハラルで何が NG(ノンハラル)になるのかは、国によって温度差があり、ハラルのものとノンハラルのものとの売り場を分けている場合もあれば、ハラルマークの付いたパッケージ食品の隣に、豚肉入り餃子のパッケージ食品が置かれていることもあったりします。あるいは、禁止されているのは人を酔わせるもの≒アルコールであり、「酔わなければいい」とか、「預言者ムハンマドの時代にはワインしかなかったので禁止されているのはワインだけだ」というような解釈をする人もいるようです。このあたりは嗜好といいますか、宗教的解釈も影響しており、明確に区分することは困難です。
図1:ハラルとノンハラルの例
国内市場の低迷で、日本の食品の販路を海外に求める動きが活発化していますが、「食」にはこうした宗教的な背景なども影響し、それぞれの国での事情や嗜好につながっています。たとえば、豚肉 LOVE の私は、マレーシアのハラル認証レストランで食事をすると、「イマイチの素」でも振ってあるんかい、と思わずにはいられません。味にパンチが足りないというか、深みがないというか・・・。でも、それが現地の事情を背景としているのであれば、それに合わせる必要があります。日本の食の品質が高いからといって、イスラム教徒の多い国の市場で、日本の食品が自動的に売れるわけではありませんし、食の禁忌に対応してハラル認証を取りさえすれば必ず売れる、というものでもありません。国によって異なる事情や嗜好を理解した商品開発の視点がなければ、海外での競争に打ち勝つことは難しいでしょう。
図2:東南アジア諸国の主要ハラルロゴ