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アフリカ物流事情と民間ビジネス機会(前編)

アフリカ物流事情と民間ビジネス機会(前編)

距離的、心理的に遠く、日本人にはなじみが薄いアフリカですが、ここ数年は注目を集める機会が多くなっています。2019年8月には、第7回目になるアフリカ開発会議(TICAD)が横浜で開催されます。日本政府は、民間企業による事業投資等、民間資金活用によるアフリカ開発支援の方針を明確に打ち出しており、日本企業のアフリカ事業進出、事業拡大にとって、交通インフラや貿易ルールといった交通物流網はますます重要になってきます。そこで、筆者のアフリカ勤務経験も踏まえ、アフリカの交通、貿易、物流事情について基本情報をご紹介いたします。

なお、「アフリカ」というと日本では「アフリカ大陸全体」を指してしまうことが多いのですが、世界的には「サブ・サハラアフリカ(サハラ砂漠より南のアフリカ)」を指すことが多く、アラブ圏である「北アフリカ地域」とは切り離して考えることが通例です。実務的にアフリカビジネスを考える上でも、この2つの文化圏を一緒くたに扱うことは好ましくない点には注意が必要です。本ブログでは主にサブ・サハラアフリカ内の交通、貿易、物流事情について説明します。

アフリカの物流事情

日用品の多くを輸入に頼るアフリカ諸国にとって、90%以上の輸出入貨物は、大陸内のいずれかの港湾を経由します。貨物は港湾で荷揚げされ、陸路にて国内の各地域もしくは近隣の内陸国へ輸送されます。輸送手段は内陸国に向かって伸びる主な回廊を利用したトラック輸送で、国によっては港での荷揚げから貨物到着まで1,000km以上の道のりを2週間から1ヶ月弱かけて輸送します。鉄道インフラの整備は遅れており、内戦時に破壊されて修復中、これから開発される予定はあるものの広大な大陸を鉄道で網羅することは困難で、今後もトラックが最も重要な輸送モードになっています。そのため、アフリカの主要港湾から伸びるいくつもの経済回廊は、アフリカ各国、特に内陸国にとっては物資輸送の生命線であり、回廊開発、そして回廊沿いの地域開発が盛んに行われています。

表 1 主な港湾から内陸国への距離と輸送日数

表 1 主な港湾から内陸国への距離と輸送日数

出典:CMA-CGM (Q4, 2016)

図 1 南部アフリカ地域の港と交通回廊の例

図 1 南部アフリカ地域の港と交通回廊の例

出典:南部アフリカ共同体(SADC)ウェブサイト より抜粋

回廊を利用した陸路輸送網が発展していく中、輸送に係るコストと時間(港湾から最終目的地)、輸送品質が、アフリカ域内貿易にとって重要です。これらの輸送パフォーマンスを決定づける要因として、交通インフラ、国境の通過、輸送方法などが大きく影響を与えます。以下、これらの要素をそれぞれ見てみましょう。

交通物流インフラ面の進展

アフリカ開発銀行(AfDB)によると、アフリカ大陸の道路と他交通インフラ整備・維持管理には年間USD 35~47million (約38~51億円)の資金が必要であると試算されています (AfDB, 2018)。アフリカの交通インフラは発展途上であるとは言え、日本を含む各国ドナーからの建設援助の他、舗装道路は主に中国企業によって急速に建設が進み、回廊パフォーマンス向上に寄与しています。また道路だけでなく、空港、港湾のインフラ整備も大きく前進しています。港湾では、南アフリカのダーバン港、ケニアのモンバサ港、タンザニアのダル・エス・サラーム港、コートジボワールのアビジャン港、ナイジェリアのラゴス港が主な輸出入の拠点となっています。どの港湾を選択するかは、港湾インフラの質、航路の多さ、港湾での荷役効率に加え、港湾と交通回廊の連結性(発地・着地の時間、合計コスト)の良さも重要な要素となります。

さらに2009年から、内陸国への輸送に際し発生する国境での保税転送の手続きに対応した「One Stop Border Post (OSBP)」の建設が進められています。OSBPは、国境の両側でそれぞれの出国・入国・通関などの手続きを行うためにトラックを停車し、ドライバーが国境で待機する時間の非効率を解消するために導入されており、2国間それぞれで行っていた書類の手続きを1カ所で実施し、事務所は各国毎に設置するもののトラックの流れを整理し、物理的な動線を改善しています。国境通過の時間短縮や書類手続きの簡素化等、非関税障壁の面を改善し、輸送の円滑化向上に貢献しています。2009年にザンビアとジンバブエ間に設置されたチルンドゥ国境のOSBPは、それまで4~5日かかっていた国境通過時間が、数時間~3日程度に短縮するという効果を発揮しました。特に、後述する経済共同体加盟国間国境で同様のOSBPが設置されており、2016年時点では、10カ所のOSBPがオープン、12カ所が建設中、5カ所が計画中でした。これらの他、49の国境が今後OSBPを設置する地点として検討対象となっています 。OSBPは貿易円滑化の手段として有効で、手続きを迅速にかつ簡易にすることで、アフリカ地域内貿易の促進にも貢献しています。

図 2 OSBPの設置(予定)地点地図

図 2 OSBPの設置(予定)地点地図

出典:アフリカ連合・PIDA

(後編へ続く)

物流ネットワーク再編・ 最適化の8つのステップ

この記事の著者

◆出身地:埼玉県春日部市 ◆血液型:O 型 ◆趣味:ダンス、ジム
2004 年 東京外国語大学 外国語学部ポルトガル語専攻 卒業
2009 年 Teachers College, Columbia University MA(修士) in International Transcultural Studies 修了
【得意分野】交通貿易物流分野の政策策定、港湾政策、回廊開発

留学や仕事で世界中を8 年程うろうろして、日本に完全帰国して3 年経ちました。海外で外国人と仕事をすることに慣れてしまうと、日本人の働き方の特殊さに驚かされますが、やっと慣れてきました。若いうちにアフリカ等の開発途上国に住んで仕事をした経験は、物流の仕事に関わっていこう決意をするきっかけともなりました。交通インフラ、物流網が整備されてないことで、レタス1個10ドル、トマト6 個15ドルというような異常な国に住むと、物流や貿易コスト高が自分のお財布を直撃するので、身をもって物流の重要性を感じるわけです。また、海外で仕事をしていて日本人だと分かると、10 年程前は「日本はすごい国だよね」と言われることも多々ありましたが、昨今ではあまり言われなくなりました。私自身の経験から、新興国や開発途上国も含む海外から日本が学ぶことが多々あると思っています。そんな海外の経験を「輸入」しながら、クライアントのお役に立ちたいと考えております。

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