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タイの物流事情~運送編②~

導入編:Pythonと統計学で物流データを分析

はじめに

前回投稿したブログ記事「タイの物流事情~運送編①~」では、主にタイでの移動手段と輸送する為の自動車販売について触れましたが、今回は運送編②として、やはり運送では欠かせない企業間輸送の観点で、バンコク近郊の工業団地から見る物流事情と大型トラックについて述べたいと思います。

バンコク近郊の工業団地から見る物流事情

タイの2011年の大洪水により、それまで工業団地の中心であったバンコク北部のアユタヤ~パトゥムタニエリア(バンコクから45分~1時間半)までの被害が甚大で、工業団地自体を南部のEECエリアであるチョンブリ県(バンコクから1時間~2時間)に移転する企業が増加しました。
船で運ばれて来た貨物は、北部地域へはバンコク港を利用して運送していましたが、南部ではそもそも海が近く、レムチャバン港を利用できることもあり、EECエリアが急速に発展して行きました。
下の資料では3空港間高速鉄道が描かれていますが、これは10年以上前からの計画のものです。2029年には開通予定とのことですが、現在はまだ船とトラック輸送に頼らざるを得ない状況です。
尚、東部のプラチンブリエリア(バンコクから2時間~3時間)も多くの企業が集まって来てはいますが、北部や南部に行くのに比べ、道路状況が悪く舗装されていない道があることや、高速道路が繋がっていないことから、バンコクから運送するのにも時間的に1日1往復に制限されます。筆者もプラチンブリエリアでは、道路状況が悪すぎてお尻が痛くなったことや、顧客訪問で時間が遅くなり、街灯の無い中でトイレ休憩をすると野良犬がたくさん寄って来た淡い思い出があります。
バンコク近郊の工業団地から見る物流事情
出所)日本貿易振興機構(ジェトロ)HP:地域・分析レポート

タイのトラックについて

前回の運送編①でも、タイでは運送において1tピックアップ車の需要と役割が大きいことを述べてきましたが、当然1tでは運べるものも限られてしまいます。企業間輸送においては大型トラックが重要な役割を果たしていますが、日本で走行するトラックとは仕様や形式が違いますので、トラックを購入するときも、輸送を依頼するときも何に気を付けなければならないか述べて行きます。

1:タイヤの数は4輪、6輪、10輪、18輪のいずれか
①4輪トラック
上述した1tピックアップ車がこれにあたります。冷凍・冷蔵仕様もよく見かけます。
②6輪トラック
トラックのタイ国内輸送では一般的なトラックです。タイヤ6本、積載重量5t以下、長さ7.2m。
③10輪トラック
トラックのサイズは②6輪と同じですが、タイヤが10本あることで積載重量が8tとなります。
④18輪トレーラー
タイヤ18本、積載重量30t、長さ12m

2:架装の形状は? 架装に箱(ボックス)がある場合は何枚扉か?
※大型トラック。知人撮影。加工済み。
※大型トラック。知人撮影。加工済み。

上記写真をご覧になって、読者の皆さんはお気付きでしょうか。ボックスのサイドに日本では見かけない扉が複数あります。日本や先進国の多くでは「ウイング車」と呼ばれるものが使われるのが一般的で、荷台の上部に取り付けられた屋根状のカバーが、ボタン1つでウイング(羽)のように開閉します。これにより荷物の積み下ろしや取り扱いを容易にすることができ、効率的で安全な貨物輸送を実現する為に広く使用されていますが、タイのトラック事情は違います。
両側面と後方に取り付けられた扉が写真のように合計10枚あります。この扉を1枚1枚、運転手が観音扉のように手動で開閉するのです。タイ人運転手にとっては、この手動で開閉する仕事も大切で重要な仕事であり、文化となっています。筆者もタイでウイング車を流行らそうとした時期がありましたが、結局は文化や考え方の違いから上手く行きませんでした。自動で開閉できるウイング車が何故タイで流行らないか、その理由はもう1つあります。それは「結果的に、両面から取り出せる荷物は同じなのに、価格が高いから」でした。実はタイ現地のトラックディーラー(ISUZU・HINO)を運営しているのは、それぞれ日本を代表する大手商社です。その優秀な日系大手商社の方々が選択した答えが、ウイング車ではなく10枚扉だったことを鑑みれば、後々納得した記憶があります。

また、日本では付属品として当たり前に付いている「テールリフト」はタイでも存在しているものの、上記と同じ「価格が高いから」という理由で流行りませんでした。テールリフトはトラックの荷台後ろに取り付けられた昇降装置のことですが、重い荷物や大型の荷物を効率的かつ安全に積み下ろすために使用されます。特に、人力では扱いが困難な重量物の積み下ろしを容易にするだけでなく、作業者の負担を軽減し、効率的な作業を実現することができますが、このトラックからの積み下ろしも、タイではトラック運転手や物流従事者の重要な仕事である為、変えて行くのは現実的に難しいと感じています。
※テールリフト(テールゲートリフト、またはパワーゲートとも言う)
出所)国土交通省HP
※テールリフト(テールゲートリフト、またはパワーゲートとも言う)

尚、テールリフトが無い車両が多いことから、ドックシェルターが無い物流センターや製造工場などでは、カゴ台車(ロールボックス・パレット)をトラックに直接搬送することが難しく、カゴ台車の販売にも影響し、タイに進出した日系企業の販売戦略を変更せざるを得ない状況を目の当たりにしたのを覚えています。

最後に

運送編①でも申し上げたように、物流の2024年問題で日本は労働時間の規制等が始まり、自動化・省人化を進めてはいますが、海外に目を向けると、特に発展途上国では「物流従事者の仕事の確保」の方が、まだ優先すべき事として存在している為、旧来からの仕事内容や機械の仕様を変えることは困難です。この「物流従事者の仕事の確保」の大切さは人口が減る日本においても同じことだと筆者は考えています。但し、この仕事が「楽しい内容であるか」「厳しい環境から解放されているか」「生産性は高まっているか」にポイントを置いて、自動化等を進めながら明るい未来を切り開いた方が良いと信じています。

(この記事は、2023年12月18日時点の状況をもとに書かれました。)

この記事の著者

◆出身地:京都府 ◆血液型:O型 ◆趣味:ゴルフ、野球、よさこい(創作ダンス)

2003年 関西大学 法学部法律学科 卒業
【得意分野】・物流設備投資支援・日系企業南アジア進出支援 ・倉庫内作業分析

NX総研の倉庫作業分析ツール「ろじたん」の営業活動と業務改善のコンサルティングを中心に活動をしています。業務改善を行うことはもとより、関わった方々のモチベーションアップとなるような活動にしたいと考えています。
趣味は前職でタイに駐在していた事もあり、辛いタイ料理を食べて炎天下でゴルフすることです。
また、学生時代は「よさこい」に熱中し、大阪「こいや祭り」立ち上げに関わり、自分の大学にダンスチームの“漢舞(かんまえ)”も創設しました。今も後輩たちが継承してくれていて、1年に1度、後輩達の踊りを観に行くのを楽しみにしています。よろしければ、YouTubeで検索してみてください。4分間の踊りで感動されると思います。

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