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これであなたも物流コンサルタントに!~ベテランコンサルタントが語る物流コンサルタントの仕事とは~

これであなたも物流コンサルタントに!~ベテランコンサルタントが語る物流コンサルタントの仕事とは~

「物流コンサルタント」をweb上で調べると、「企業の物流システムを改善し、業務プロセスの最適化に取り組む専門家」などと記載されています。具体的には、物流戦略の策定、倉庫・配送システムの改善、在庫管理の最適化、輸送コストの削減、業務改善に貢献、プロジェクトマネジメントなど、キーワードも目にすることができます。しかし、実際のところ物流コンサルタントがどのような業務を行っているのか、想像しがたいのではないでしょうか?
そこで今回は物流コンサルタント歴38年の上田実シニア・コンサルタントにインタビューし、物流コンサルタントの仕事について話を伺いました。

物流コンサルの大まかな流れとは

お客様からお問合せを受けてから初めに行うこととして、ヒヤリングと現場確認があります。これは計画書作成前に行う軽い現状把握という位置づけではありますが、お客様の要望を明確にとらえるという点で非常に重要になります。多くの場合、現状の課題や改善の方向性がぼんやりとしていることが多く、またそのために外部の力、つまりコンサルを依頼するという状況にあるためです。
初回のヒヤリングや現場確認を完了後、提案書(計画書)を作成します。顧客の要望が明確になっているか、要望を叶えるための行うべき項目を整理し、スケジュールに落とし込みます。その後受注できた場合は提案書(企画書)に沿って活動をしていくことになります。実際はこの時点で既にある程度の見通しが論理的に通っていることが案件の成功に影響します。
受注後はより深い現状分析を行います。現状分析ではデータと現場の両面にアプローチします。得られた調査結果を目に見える形にすることが重要です。当たり前のことも取りこぼしなく見える形にすることで課題発見につながります。また、現状把握で抱いた違和感は仮説を立てることに役立て、仮説を検証することで議論を深めます。
最後に成果報告となりますが、大体の場合、報告書の提出と報告会の実施が求められます。昔の報告書はWord形式が多かったのですが、近年ではPowerPointを用いた形式が多くなっています。

物流コンサルの王道、「現場改善」

実際のところ、物流コンサルの案件としては現場改善系が一番多かったです。現場改善、現場の効率化、と言い方は様々ですが、簡単にいうと「作業を楽にする」ということです。物流現場はマニュアル作業(手作業)に頼っている部分が大きい分、少しずつ変化していく、ということができます。少しの気づきや変化が「楽になる」ことに繋がります。
現場がどうしたら「楽になる」か、という観点で最も重要なのは現状把握です。物流の現状を把握する方法としては、現場視察やヒヤリング、定量データの分析など様々な手法がありますが、最も重要な点は実際に「現場を見る」ということです。

「現場を見る」とは

現状把握では実際の物流現場を訪れ、モノの流れと情報の流れがどのようになっているのか、自分の中でイメージ、想像できるかが肝となるのですが、経験が浅いうちは難しく、多くの物流現場を見ることで身に着けることができます。いち早くそういったスキルを習得するために有効なのは自分自身で現場を見て業務フローを書く練習をすることです。この時作成するフロー図の精度は必ずしも高くある必要はありませんが、自分自身で見聞きした内容を整理し図解することで業務の流れを想像することができます。また、作成したフロー図に数字(入出荷量、リードタイム、作業人数など)を書き加えることで現場の流れや滞留が見えてくることもあります。業務フローが書けるようになった後は情報システムとの連携イメージを持つことも大事です。具体的には作業指示と現場の動きをリンクさせることで、脳内で現場の復元ができるようになります。

図1: 現場での業務フローメモイメージ
図1: 現場での業務フローメモイメージ

その他にもその現場のルールすなわち原理原則は何かというのを確認することが重要です。物流現場はあらゆるイレギュラー、波動に対応している反面、その対応がルールに則ったものか、イレギュラー対応なのかの見極めが大変重要です。通常のケースとイレギュラーのケースの分類を意識することで、その現場の課題も見えてきます。
参考までに最低限の確認ポイントをご紹介します。

①受注締め切り時間:これは業務のスタートの時間でもあります。受注締め切り時間を過ぎた業務はイレギュラー対応分となります。
②納入リードタイム:受注締め切り時間から実際の到着期日までの期間を指します。そもそも適切な物流拠点配置になっているか、という観点でも重要になります
③出荷最小単位:ケース出荷なのか、バラ出荷なのか、荷姿によって庫内の取り扱い方法が大きく異なります。サンプル出荷や欠品分出荷などは通常対応に含むかどうかの見極めなどに影響します。

また、意外かもしれませんが、整理整頓されているかどうか、どこに何があるか、だれが見てもわかるかという点、所謂5Sという観点は必ず見るようにしています。今、物流現場は職人気質から誰でもできる風土へ大きく変わってきています。まだまだ人主体で動いているからこそ、現場の整理整頓は重要です。

物流のデータはどこにある?

これまで現場の話が多かったのですが、やはりデータがないと課題や改善施策に説得力を持たせることができません。現場でデータの有無を確認するとたいていの場合、紙ベースでしか発見することができず途方に暮れます。しかし、実際はシステム部門や営業部門にそれらのデータがあるケースが多いのです。例えば輸送関係のデータは営業部門の売り上げデータから納入先や納入頻度、数量などが確認することができます。倉庫内でHHT(ハンディーターミナル)がある場合はWMS上に保管量や作業実績があります。これらのデータは現場からの抽出は困難ですが、しかるべき部門に問い合わせすることで入手が可能です。つまり、物流に関するヒヤリングは物流部門だけではなく、システム部門や営業部門、さらには製造部門にもアンテナを張る必要があります。

さいごに

これから物流コンサルを目指す方や物流を学ぶ若い方に期待したいことは是非「工学部的」な考えを大事にして頂きたいということです。物流コンサルにとって論理的思考能力と仮説証明は大変重要です。また、近年ではスピード感も重要になってきました。昔は4~6か月程度のリードタイムの案件が多かったのですが、最近は3~4か月でアウトプットを出さないといけないケースが増えてきています。一方で物流コンサルへの期待値は拡大傾向にあります。かつて社内で物流部を抱えていた企業は物流子会社を作り、本社の物流機能が失われてきましたが、最近では本社機能で社内物流を考える部門が再度出てきています。そういった部門、つまり経営層に直結している部署などから物流コンサルに第三者として物流を評価してほしいというニーズが広がっています。こういったニーズの裏には、現場が抱えている問題や、改善・対策に必要な投資に対する要望などが経営層に届きづらいといった意見があります。一方、経営層から見ると、物流部門に期待していることや、今後取り組んで欲しいことなどが現場や関係部門に徹底されにくいなど、社内の声よりも外部からの意見の方が社内で説得力が高いという話を聞きます。いわば代弁者という役割も物流コンサルタントにはあるのかもしれません。

(この記事は2023年4月28日時点の状況を基に書かれました。)

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