はじめに
物流コンサルティング会社であるNX総合研究所が2015年にサービスを開始した倉庫の作業時間計測ツール「ろじたん」は現時点で約500拠点に導入されており、現状把握、手書き日報のデジタル化、ピッキング効率などのKPIの算出、現場改善、個建単価の価格交渉などの様々な目的で利用されています。
「ろじたん」には導入コンサルティングというオプションがあります。これは「ろじたん」を使ってみたいけど、うちの現場でどのような計測作業項目を設定すればいいのかわからないというお客様に対して計測開始までのサポートを行なう業務で、物流コンサルタントが現場視察、ヒアリングをして計測作業項目をお客様と一緒に決めた後、「ろじたん管理者用Webサイト」の初期設定を代行して、計測開始直前に現場を再訪してスマートフォンあるいはタブレットの操作方法、計測データのダウンロード方法、分析ツールの利用方法などの説明をするサービスです。
今回は2022年4月から計測を開始した愛知県豊橋市に本社がある「知多産業運輸株式会社」様の導入コンサルティングのレポートをお届けします。
DAY1(計測開始の約3週間前):ヒアリングと現場視察
計測開始日の4月1日の約3週間前に今回の「ろじたん」導入現場である豊橋御津DPを訪問してヒアリングと現場視察を実施して計測作業項目を一緒に検討しました。
豊橋港の近くにある豊橋御津DPでは倉庫業務と運送業務で部署が分かれていて、それぞれ荷主も異なっているとのことで、「倉庫」と「運送」でそれぞれのデータが集計できるように施設を分けて設定ことにしました。
計測作業項目を検討するにあたって「作業項目は入荷・出荷・保管・休憩・その他の5つだけでいい」「デバン作業はバラ入荷の場合とパレット入荷の場合は別の作業項目にしたい」「ピッキングはトータルピックとオーダーピック、ケースピックとピースピックで分けたい」「事務作業を詳しく計測したい」とお客様によって様々なニーズがあるので、「ろじたん」は15種類の計測作業項目のテンプレートを用意しています。お客様が計測したい作業項目が一番たくさん入っているテンプレートをひとつ選択して、そのテンプレートの中にない作業項目を追加、いらないものは削除、名前を変更するなどしてその現場独自の作業項目をかんたんに作っていきます。
知多産業運輸様では「運送部門の事務作業を詳しく計測したい」というニーズがあったので、「詳細(事務)」という事務作業の項目がたくさん入っているテンプレートを選んでカスタマイズすることにしました。
運送部門の配車担当者にヒアリングしたところ、実際の配車業務よりもその手前の顧客との電話による日時・車種・台数の調整作業に時間がかかっているので、調整作業の時間がわかるような計測したいとお話があったのでテンプレートにはない「配車調整」という作業項目を追加することにしました。
ヒアリングで計測作業項目の大枠を決めた後、倉庫現場を視察します。豊橋御津DPは危険品を扱う倉庫ということで各棟の中にはパレタイズされた一斗缶、ドラム缶が保管されていました。
現場視察は視察時に作業者がしている作業が先程検討した作業項目の中に入っているかどうかという確認と「手待ち」が発生した時にどのような作業をしているのかを作業者に確認する目的で行ないます。
「手待ち」という作業項目のボタンを作っても、作業者は「手待ちのボタンを押すと自分はサボっていると思われるんじゃないか」と不安に思うのでなかなか押してもらえません。手待ちが発生した時にやっている作業、例えば「パレット整理」「資材準備」「翌日のピッキング準備」のような作業をやっていればその作業項目の追加をします。「データ待ち」「車両待ち」「ピッキング待ち」など「手待ち」の理由が明確な場合はその理由を作業項目として登録しておくと積極的にボタンを押してもらえるということもわかっているので、手待ちの発生頻度と理由を現場スタッフに確認して、必要であれば計測作業項目として追加します。
1回目の導入コンサルを終えた後、その時に決めた計測作業項目で「ろじたん管理者用Webサイト」の初期設定を行います。導入コンサルティングのオプションなしの場合はお客様自身でオンラインマニュアルを参照しながらこの作業をやって頂くことになりますが、導入コンサルティングをする場合はNX総研がこの作業を代行します。
初期設定には「施設情報の登録」、「計測作業リストの作成」、「スタッフ情報の登録」、「スマートフォン画面に表示させるボタンの位置を設定するグループ別ボタン割付」などの作業があります。
下記は「ろじたん管理者用Webサイト」の計測作業リストの作成画面です。ヒアリングで確認した「配車調整」の作業項目はテンプレートには入ってなかったので追加しました。作業項目が多い場合はエクセルで作成してCSVファイルにして一括アップロードすることもできます。
ろじたん管理者用Webサイトの「計測作業リスト作成」の一部抜粋
DAY2(計測開始の前日):利用方法の説明会の実施
計測開始日の前々日に初期設定の情報を読み込んだスマートフォン・タブレットなどの端末類がお客様の手元に届きます。その翌日の計測開始日の前日に再訪をして、計測対象のスタッフの方々にスマートフォン、タブレットの利用方法を説明します。全員が仕事を抜けて説明会に参加するのは難しいという場合は同じ内容の説明会を2回実施することもあります。当日参加できない方はオンラインマニュアルの中にリンクを貼っているビデオを見て頂くこともできますので参加できなくても心配はありません。
約30分の操作説明の後で、管理者向けの説明会を実施します。これは計測したデータのダウンロード方法、計測データの修正方法、計測作業項目の変更方法、分析ツールの利用方法を説明する内容で約90分。「かんたんKPI」という実績データをアップロードして生産性を算出して自動的に表やグラフを作成する機能のオプションをつけた場合はその説明もします。管理者のPCを使ってお客様自身でパソコンの操作をして頂きながら説明します。
終わりに
導入コンサルティングは1回目の訪問、2回目の訪問、それぞれ約3時間です。オプションなのでつける、つけないはお客様で決めることができますが、計測作業項目が多い場合、計測対象人数が多い場合は初期設定も説明も任せた方が楽なので、導入コンサルティングのオプションをつけるケースが多いです。ビーコンを使った「位置情報分析ツール」を利用される場合は倉庫内のビーコン設置位置の事前確認作業があるので導入コンサルティングが必須になります。
「ろじたん」の説明をした際にお客様から「導入コンサルって具体的にどんなことするのですか?」という質問を頂くことがあるので、レポートという形で概要を説明しました。写真撮影にご協力をいただきました知多産業運輸様に感謝します。誠にありがとうございました。
(この記事は、2022年4月18日時点の状況をもとに書かれました。)