倉庫内の作業時間をスマートフォンで簡単に計測する「ろじたん」は、2015年10月のサービス開始以来3年間で250以上の物流拠点に導入されました。2018年6月には、利用顧客からの高いニーズに応えて、複数の作業者の作業時間を1台の端末で計測できる「ワークサンプリング機能」が新たに追加されましたので、今回はこの機能について詳しく紹介いたします。
従来の手作業によるワークサンプリングの実施状況
物流倉庫の業務改善に取り組む際、最初に行なうことは現状把握です。誰がどの時間帯にどんな作業をしているかを調査します。作業者一人一人が作業の終了後にその日やった作業を紙に記録して、その紙を事務員がPC入力して集計するという方法が一般的です。しかし作業者によっては手待ち時間が発生した場合に別の作業として書くことがあり、客観性のあるデータになっていない場合もあります。そこで、第三者が作業者の時間計測を行なうワークサンプリングの手法が採用されるわけです。
ワークサンプリングは作業者が行なっている各作業を瞬間的に観測して、統計的に集計して分類する方法です。具体的には調査対象である作業者を、ランダムに決めた時刻に見回り、その瞬間の作業者の状況を記録します。「許容誤差」、「信頼度」で観測回数を決めますが、物流倉庫では紙による時間計測が15分単位の表になっていることが多く、ワークサンプリングも15分単位での計測が多いようです。
ワークサンプリングを実施する前に誰がどのような業務をしているのかの洗い出しを行なうための事前調査を行ない、その洗い出した作業項目を紙の表にした調査記入シートを作成します。物流拠点の人数にもよりますが、1人の計測者が3~10名の計測対象者を受け持ちます。計測日は計測者が各作業者を判別しやすいように作業者は名前や番号をつけたゼッケン、あるいは帽子をかぶって作業を行ないます。15分の計測間隔であれば計測者は15分に1回、どの作業者がどんな作業をしているのかを紙に書いていきます。1日の計測が終わると、ここからが大変で計測者は紙に記載された内容をPCに入力して作業項目ごとの時間を集計していきます。
「ろじたん」のワークサンプリング機能のご紹介
「ろじたん」の新機能であるワークサンプリング機能は紙に書く手間を省き、PC入力作業をなくし、自動で集計を行なうので、ワークサンプリングの作業効率を大幅にアップさせることができます。では、どのような手順で行われるかを見ていきましょう。
ワークサンプリングを実施する前に業務の洗い出しを行なう事前調査をするのは通常のワークサンプリングと同じです。調査した作業項目とスタッフの情報を「ろじたん」の管理者用WEBサイト上に登録していきます。計測作業項目の作成については「ろじたん」では15種類のテンプレートを用意しているので、計測したい作業項目が一番たくさん入っているテンプレートをひとつ選んでそこにないものを追加したり、いらない作業項目を削除したり、作業名を変えることによって簡単に作成することができます。「普通(推奨)」というテンプレートでは物流倉庫で一般的に行なわれている約50の作業項目が入っており、このテンプレートが使われることが多いようです。
<図1:ろじたん管理者用WEBサイトの計測作業リスト作成画面>
計測対象となるスタッフの情報を設定する画面ではスタッフIDに作業者のゼッケンにつける番号、スタッフ名に作業者の名前、そしてその作業者のスタッフ区分を正社員、契約社員、派遣、パートなどから選択して登録します。このスタッフ区分の登録によって計測終了後に作業項目ごとの概算コストが自動計算できるようになります。
※なお、詳細は後述します。
<図2:ろじたん管理者用WEBサイトのスタッフ情報設定画面>
計測日までにWEBサイト上で計測作業項目、スタッフ情報、スマートフォンの画面設定を行なえば、計測日は計測者がスマートフォンを手に持って、15分ごとにどの作業者がどの作業をしているかをスマートフォンのボタンを押して記録していくだけです。
<図3:複数人計測でのスマートフォンの画面>
15分ごとにスマートフォンの音が鳴るので、その時に作業者の名前(あるいはゼッケンの番号)を選択して、その作業者がしている作業項目のボタンを押します。15分単位の計測であれば1時間に4回上記のボタン操作を行ない、計測作業が終了したらスマートフォン端末からデータ送信を行ないます。データ送信を行なった後にすぐに集計と分析ができるのが「ろじたん」のメリットです。
送信したデータをろじたんの管理者用WEBサイトからCSVファイルとしてダウンロードして弊社が提供する分析ツール(エクセルファイル)に読み込むだけで15種類の表やグラフが入った一括レポート(L Reports)を自動生成し、日別・施設別・スタッフ別の詳細分析ができる23種類の個別レポートが作成可能になります。
<図4:L Reportsの施設別作業時間構成>
上記は「ろじたん製薬」と「ろじたん食品」という2つの荷主を扱っている物流倉庫で12名の作業者のワークサンプリングを実施したと仮定した例です。上記の図は、データを分析ツールで分析すると自動生成される一括レポート(L Reports)の中に含まれている「施設別作業時間構成」という表になります。
この表では、それぞれの荷主の計測作業項目の時間が集計され、総時間の3%以上を占める作業は赤でハイライトされます。これは計測結果を元に倉庫の業務改善に取り組む場合、ある程度まとまった時間になっている計測作業項目にフォーカスした方が効果的なので、改善に取り組むと効果がある項目としてわかりやすく赤でハイライトしています。
一般的な物流倉庫ではピッキング、検品、梱包などの出荷作業の比率が高い傾向があります。上記の表もそのように結果になっていますが、ピッキングにかかった作業時間が既に集計されているので、この時間をこの日のピッキング行数で割れば1時間あたり何行のピッキングをしていたかという生産性がすぐに把握できます。
<図5:個別レポートの作業別概算コスト>
ワークサンプリングの目的として多いのが収支の厳しい作業項目のコスト試算で、いわゆるABC分析(Activity-Based Costing)です。このABC分析も分析ツールの中の個別レポート「作業別概算コスト」で簡単に試算できます。
ろじたんWEBには既に各作業者の作業項目別の時間が入っているので、上記のエクセルシートの上部にある作業単価という部分にそれぞれのスタッフ区分(前述のスタッフ情報の設定時に設定済み)の時間給を入力して、再計算というボタンを押します。すると図5の下部の表にそれぞれの作業項目のコストが表示されます。ピッキング、検品、梱包にかかっているコストが表示されますので、これをピッキング行数や梱包数で割れば1行あたりのピッキングコスト、1個あたりの梱包コストが簡単に計算できます。
上記の2つの表は計測データの送信後5分以内に作成可能です。通常のワークサンプリングの場合、紙による手作業での記入も面倒ですが、記入後のPC入力と集計にも時間がかかります。「ろじたん」のワークサンプリング機能を使えば、この部分の効率もアップしてワークサンプリングにかかる時間を削減つまりワークサンプリング費用の削減ができます。ワークサンプリング用の特別料金もご用意していますので、次のワークサンプリングの機会があればご検討されてみてはいかがでしょうか?