【Product Report】「ろじたん」で簡単端末作業分析
昨今、WMS(倉庫管理システム)やハンディターミナルを使って、倉庫内の作業時間の「見える化」に力を入れている物流倉庫は多くありますが、物流倉庫の事務員の作業時間についてはどうでしょう。事務作業の時間まで計測しているという現場は少ないのではないでしょうか。今回は輸出入の通関書類作成やコンテナの配送手配を行なう20名の事務員をかかえた物流倉庫、そこに配属された新任の管理責任者が行なった事務員の作業の「見える化」によって意外な実態が判明した事例を紹介します。
ピッキング棚や出荷口など、様々な場所を行き来する倉庫作業員と違って、事務作業員はずっとパソコンの前に座っているので、誰がどんな作業をしているのか一見わかりません。新しい管理責任者は、「本当に事務作業に20名も必要なの?」と疑問に思っても、実態が把握しにくいため疑問を口にしづらい状況にありました。そこで、そのような状況を打開するために事務員の作業内容を「ろじたん」を使って計測してみることにしました。
まず、顧客に請求している1件あたりの通関手数料が妥当な金額かどうかを検証するために、売上の上位4社の大手顧客について、通関書類の作成・作成した書類のチェック・請求書作成・メール対応・電話応対の時間をそれぞれ顧客単位で計測することにしました。事務員の中には、自分達に対する管理が厳しくなるのではないかと、警戒する方もいましたが、目的を説明すると理解・納得して積極的に協力してくれました。
この倉庫では、アパレル会社の荷物を多く取り扱っています。多くのアパレル会社では、衣類を中国や東南アジアで生産してから日本に輸入していますが、ボタンや衣類ラベルなどの「副資材」と呼ばれるものの一部については、日本で生産したものを生産国へ輸出し、副資材が付けられた製品を輸入する際に副資材の価格分の免税手続きを行ないます。この手続きの根拠法となっているのが「暫定8条」(略してザンパチ)です。この暫定8条の手続きを含む場合は、書類作成にかなり時間を要するため、通常の通関手数料以外に別途手数料を請求します。今回の作業時間計測では、この「暫定8条の書類作成」にどのくらい時間がかかっているかを顧客別に計測することにしました。「かかった作業時間≒コスト」という考え方に基づく個建て単価(通関手数料と暫定8条手数料)の検証が目的です。「ろじたん」で作業者のスマートフォンに表示される画面には、下図の計測作業項目のボタンを設定しました。
画面設定
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計測してみると、意外なことがわかりました。比率的に多いと思っていた上位4社の顧客に対する事務作業時間は、4社合計で全体の約10%しかありませんでした。売上の少ないその他の顧客に対して、全体の38%と多くの時間がかかっていたのです。また、時間がかかっているはずの暫定8条の書類作成については、作業全体の2%程度に過ぎませんでした。通関書類1件あたりの処理時間は、通関アイテム数と種類、顧客からの書類のタイムリーな受領、事務員の生産性など、様々な要因によって変わってきます。取扱数が少なかったため、これまであまり意識していなかった顧客の入出荷傾向や、事務員の作業生産性が把握できるようになりました。
今回の計測結果により、事務員それぞれが何をしているのか、今では管理責任者も把握できるようになりました。また、書類作成時間に影響を及ぼす顧客の入出荷傾向もある程度把握できるようになりました。作業員ごとの時間あたりのピッキング件数をWMSやハンディターミナルで取得できる倉庫と同様、「各事務員の書類1件あたりの処理時間」という生産性をきちんと評価する重要性と、それを適切な人員配置に生かすことができるという利点に気付いたとのことです。
意外と盲点になっている事務員の作業の「見える化」、取り組んでみる価値はあるのではないでしょうか。