【Special Article】Hannover Messe & CeMAT国際展示会①
現地ヒアリングに基づいたイノベーションの考察
展示会に参画していた企業からのヒアリング内容や意見交換に基づき、先端技術の利活用における自動化・省力化テーマを柱とした、”ボトムアップの考え方”に加え、”上流であるサプライチェーンやロジスティクスを俯瞰的に捉えるためのトップダウン型の考察”も行って、現場感覚と経営目線に基づくハイブリッド型思考のレポートを作成しました。最後までお付き合いください。
上記掲載の企業を中心に、製品のヒアリングを行いました
1.はじめに(サプライチェーン・ロジスティクスビジネスを支えるIoTと組織について思うこと)
昨今、物流現場のみの改善は頭打ちになっているところも少なくないことから、新たなIoTと組織の概念、そして展示会でのヒアリングで得られた製品技術を上手く組み合わせ、必要性や効果、課題などについての論点を紐解いていきたいと思います。
「経営戦略は組織に従う」、「組織は最も重要な経営基盤」、という言葉がありますが、皆さまは耳にされたことはありますか?物流に携わっている方々は、組織よりも現場の運用面に目が行きがちではないでしょうか。実は、運用面をどんなに強化・改善をしても、その運用を支える組織が適切に機能していなければ、正常な業務は成立しません。経営戦略、事業戦術の活動指標(財務諸表でいうB/S、P/L、C/F)や稼働の源泉が「ヒト」だとすれば、尚更、組織機能の重要性が際立ちます。
20年以上前に、ロジスティクスという概念がSCMとともに日本に外来し、「物流」という看板を一斉に「ロジスティクス」に掛け替えるに至りました。しかし、物流の実態は大きく変わらず、結果として、発展を遂げる他産業に遅れを取ることになりました。サプライチェーン全体の最適化を真に実現するためには、最終工程である物流を高度化し、組織が率先して課題を喫緊に解決する必要があります。つまり、これらの要件に対応ができるソリューションの利活用が不可欠なのです。
2.先進的且つユニークな技術を持つ、パッケージの発見!
今回は、最適な作業手順、リスクやイレギュラーの回避方法、未来を予測する推察手段などをデータベース化させて、ビジネスインテリジェンス(BI)を構成し、それを発展・進化させた形で実務の判断や意思決定を行う、アーティフィシャルインテリジェンス(AI)の技術に着眼し、それに準拠した製品を中心に探索を行いました。その狙いは、企業の基幹システム(ERP)と現場で運用している実行系システムとの間に、AIが導入されているパッケージを見つける事、企業の経営指標である「キャッシュのインとアウト」、「総資産利益率」、「在庫回転数」の完全可視化と、これらの数値の是非を問うことができる製品を発掘し、日本での利活用の可否を判断することでした。
そこで見つけたのが、某ITベンダーが持つソリューションでした。それは、ERP側で棚卸資産が管理でき、同時にAIにおいて需給の予測を行い、生産と物流の計画を立案するプログラムを持った仕組みでした。その仕組みには、安全在庫と適正在庫を同時に算出する機能もあり、その算出数値を基に入出荷計画を組み、その計画情報を基に予定・指図データを起こして、WMSやTMSに指示を与えるなど、これらの業務工程(ロジスティクス・物流に関連する作業一連の流れ)をAIが随時記憶し、学習結果を蓄積していくことで品質・生産性の向上が図れることがわかりました。このツールが、今回の展示会において、最もユニークでインパクトのある先進的実行ツールであると感じました。
先端技術を駆使した物流機器、機材
IoT化、AIの導入は、企業にとって自動化・省力化の効果だけではなく、コスト低減化に伴う経営スコアの改善と向上に繋がるのではないでしょうか。
今回の展示会では、普段知り得ない情報が取得でき、また各ブースの窓口担当員と密接に意見交換ができたことが大きな収穫となりました。
3.日本企業のIoT、AI技術が海外の企業と比べて遅れている理由、要因をヒアリング!
4.ヒアリング結果から予見する国内ビジネスシーンへの展開について思うこと
近年、物流市場において過剰な品質管理に加え、業務内容に見合わない価格要求(ダンピング要請)などを物流会社側に注文をしてくる事業者が目立つようになりました。
物流会社はこの制約や制限の下で、運用とコストの両面において苦戦を強いられていると想像ができます。その要因は、上流である予測・計画から川下である管理・実行までの工程が、属人的判断に依存し過ぎている事に起因しています。これらを、IoTやAIの観点から自動化、機械化に転化させ、オペレーション精度を向上させた上で効率化を促進させることが必要です。今後のビジネスシーンは2020年以降、インダストリー4.0から更にグレードアップされた概念へ加速度的に進んでいくことが予想されますが、一方で日本がそれに追随していくには、先ずは海外の企業と比べ、遅れている要因を解消することが前提となります。
今後、モノや事象のインターネット化(IoT)に伴い、設備が人と協調して動く、サイバーフィジカルシステムという形で、遠隔操作・リモート処理による現場の無人化への対応が主軸になってくることが予見され、これが組織機能の在り方と組み合されることで、コグニティブ(意思を持つ・認知する)ビジネスへと遷移していくのではないでしょうか。最後に、ただ一つ懸念事項を挙げるとするならば、今を時めくITベンダーやソリューションメーカー、ともすればコンサルティングファーム、研究機関に至るまで、IoTやAIという看板を標榜するだけの名ばかり“システムインテグレーター”に化してしまうことが、良くも悪くも想像ができてしまうことです。日本も、海外の取組み姿勢と同じ目線で、国としての重要インフラ化を推進することが、この懸念事項を払拭するための近道なのかもしれません。
図:サイバー フィジカル システムの概念
出所:デスクトップ調査により、日通総合研究所が整理
5.最後に(大型投資の是非を見極めるためのデューデリジェンスの必要性)
今回の展示会の参会で感じた事は、IoT・AIなど、大型投資を検討するにあたって、投資の対象となる企業の経営状態(財務状況)や投資先の価値・リスクなどを調査し、経営及び事業のアセスメント(評価・査定・審査)を行うことが不可欠であるということです。これは、投資対効果を把捉するための “企業デューデリジェンス” になります。
次回はこのデューデリジェンスについてのお話をさせていただきたいと思います。乞うご期待!
会場の中を1日中歩き回り、日平均で10キロ、4日間の参会で延べ40キロ以上を歩き、足が棒のようになってしまいましたが、終了後にいただいたビールとステーキは格別でした。