【Logistics Report】イノベーションを推進するための組織改革(前編)
8月号の「ロジスティクス部門よ、イノベーターたれ!!」では、「イノベーションを推進する“イノベーター”としての役割が、ロジスティクス部門に求められている」というお話をしました。では、イノベーションを推進するための組織はどうあるべきなのかという事を2回に分けて考えていきたいと思います。
イノベーションは天才だけのもの?
「代表的なイノベーターは?」と質問されて、思い浮かぶ人物は誰でしょう。“T型フォード”で産業と交通のイノベーションを起こしたヘンリー・フォード?それとも“iPhone”や“iPod”などの革新的な商品を次々に世へと送り出したスティーブ・ジョブズ?イノベーションの事例では、このように希代の人物に焦点が当てられて紹介されることが多いので、「イノベーターとは一握りの天才」のことだと思っている方も多いでしょう。
しかしながら、その答えは否。経営学の巨人ピーター・ドラッカーは「イノベーションは天才によるひらめきではない。それは、ハードな働きである。」と言っています。これまでの通説にとらわれず、自由な発想で物事を捉えることができれば、誰でもイノベーターになれる可能性があるということです。
そもそも日本人のイノベーション能力は高いのか?
人々を笑わせ、そして考えさせられる研究に贈られるイグノーベル賞を、日本人が2007年から11年連続で受賞しているのをご存知ですか?このイグノーベル賞、侮るなかれ、本家のノーベル賞を受賞した研究者が受賞しているほど凄い賞なのです。一方、本家のノーベル賞はというと、内閣府が発表している自然科学系のノーベル賞の受賞数をみると、2001年以降、米国に次いで日本は第2位につけています。
これらの数値だけをみると、日本人のイノベーション能力は“世界のトップレベル”と言っても過言ではありません。
何故、日本企業はイノベーションを発揮できない?
世界経済フォーラム(以下、WEF)国際競争力レポートにおけるイノベーションランキングによると、日本はこれまで4位~5位で推移していましたが、2016-2017年版では8位に後退しています(表1)。
表1.WEF国際競争力レポートにおけるイノベーションランキングの経年推移
出所:未来投資会議 構造改革徹底推進会合「第4次産業革命(Society5.0)・イノベーション」会合(イノベーション)(第2回)
内閣府ではその理由として、日本のCapacity for innovation(イノベーション能力)のスコア・順位が2013-2014年版以降低下傾向にあることを挙げています。低下の背景・理由として、2013-2014年版以降の質問内容が、“自前の研究開発能力”を問うものから、“イノベーション能力”を問うものになったため、評価が下がり、スコアと順位が低くなった可能性を指摘しているのです(表2)。
表2.イノベーションランキングのサブ項目のスコアの経年推移(日本のみ)
出所:未来投資会議 構造改革徹底推進会合「第4次産業革命(Society5.0)・イノベーション」会合(イノベーション)(第2回)
近年、日本企業のイノベーション停滞を指摘する声が聞かれますが、このデータからもその事実を読み取ることができます。
何故、個人のイノベーション能力は高いのに、日本企業のイノベーション能力は低いのでしょうか。実は、iPhoneやiPodのアイデアは、日本企業の技術者も持っていたと聞いたことがあります。つまり、“組織が個人のイノベーション能力をうまく引き出せていない”ということです。
次回は、イノベーションを起こしている企業を参考にしながら、「イノベーションを推進するための組織とはどうあるべきか」を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。