【Logistics Research】LPIからみる日本の物流 世界ランキング
◆LPIとは
Logistics Performance Index(LPI、物流パフォーマンス指標)は、世界銀行が2年毎に発表している各国の物流に関するパフォーマンスを測った指標です。世界160ヵ国を対象としており、それぞれの国が抱える貿易や物流に関する課題や解決策、円滑なサプライチェーンの重要性を明らかにすることが目的とされています。
調査方法は、1,000名以上の国際フレイトフォワーダーや宅配業者を対象としたアンケートによる定性調査と、サプライチェーンの効率性を測るデータ(時間、コスト、輸出入品に関する諸手続きなど)による定量調査があり、その結果に基づき①通関・②インフラ・③コスト・④品質・⑤トレース・⑥定時性という6つの項目を5段階で評価し、その評価値の平均がLPIとなっています。
◆ランキング
2016年の調査では、ドイツが2年連続の首位となっており総合スコア4.23、最下位はシリアの1.60でした。日本は総合スコア3.97で、160ヵ国中12位。前回調査よりスコアを上げたものの、順位を2つ下げる結果となりました。過去4回の調査では、2007年と2012年はシンガポール、2010年と2014年はドイツが首位でした。日本は2007年に11位、2010年は7位、2012年は8位、2014年は10位、そして今回は12位と、2010年の7位が最高で、以降年々順位を下げています。
表:上位12ヵ国のLPIランキングと総合スコア
世界銀行資料より日通総研作成
◆日本の物流の強みと弱み
項目別スコアでは、⑥定時性(4.21)、②インフラ(4.10)、⑤トレース(4.03)、項目別順位では①通関(世界11位)、②インフラ(同11位)、④品質(同12位)の順に高くなっており、これらが日本の強みと言えるでしょう。
日本物流団体連合会が実施する日本の物流の「強み」に関するアンケート結果によると 、「きめ細やかなサービス」「サービス・接客レベルの高さ」などが、上位に挙がっており、これらはLPIの項目に置き換えると、主に④品質を構成する要素であると考えられます。日本の物流の「弱み」については、「100%の追求が逆に高コストの要因」が最も多く挙げられており、品質の良さが高コストを招き、日本水準ほどの品質や安全性が求められない海外市場においては、コスト競争力が劣る要因になっているのではないかと考えられます。日本の③コストのスコアは3.69(世界13位)と、日本の他の項目と比較すると低水準となっており、項目別スコアの中では最も低く、項目別順位においても、そのランキングは2番目に低い項目となっています。
ただ、海外で高く評価されている日本の物流の高い品質や定時性も、世界の物流先進国であるドイツやシンガポールと比較すると必ずしも優れているわけではないということがわかります(図参照)。④品質は3.99(世界12位)と、首位のドイツとの差は0.29。⑥定時性は4.21(同15位)で本項目首位のルクセンブルグ(スコア4.80)とは0.59もの差がありました。
図:ドイツ・シンガポール・日本のLPI指標比較
世界銀行資料より日通総研作成
物流と貿易は切っても切れない関係にあり、一国の経済発展に物流の整備は欠かせません。国際競争力を高めるためには、効率的な物流を構築できているかどうかが、大きなポイントとなるでしょう。物流の効率性を指標化しているLPIは、今後、海外進出や海外での提携先を選定するうえでの「判断材料」の一つとしても活用できます。皆様も是非参考指標としてご活用ください。