かつ大品輸送の限界はどこまで?
「かつ大品」と聞いて、すぐに理解できる人は少ないと思います。「かつ大品」とは、元々「鉄道貨物で基準を超える貨物」を示していたようです。今では、その他の特殊貨物を扱うという意味で、重い品物を称して「重量品」にも使用されています。各輸送モード(陸上、海上、航空)によって輸送制限値が異なるのは当然なので、ここでは「かつ大品の道路輸送」に絞った基準値についての話をしたいと思います。日本国内で、道路輸送における輸送制限を設けている法律が次の3 法です。
- (1) 道路運送車両法(所管官庁:国土交通省[旧、運輸省])
- (2) 道路法 車両制限令(所管官庁:国土交通省[旧、建設省])
- (3) 道路交通法(所管官庁:警察庁)
まず、法の目的からして、「道路運送車両法」は“道路を通行する車両”そのものについて規定しています。次に「道路法」は“道路構造物自体”に関わる規定であり、「道路交通法」はその言葉の通り、“道路を通行する交通の安全”に関する法律です。
「道路運送車両法」は、車両を製造する段階で必要となる法律なので、多くの荷主、運送会社にとって直接関係するのは「道路法」と「道路交通法」になります。規制値をみると法の趣旨・性質上、若干の相違はありますが、下表の通り非常によく似ています。
道路運送車両法 | 道路法 | 道路交通法 | |
---|---|---|---|
幅 | (貨物に無関係) ・2.5m |
(貨物積載状態) ・2.5m |
(貨物積載状態) ・車両幅を超えないこと |
高さ | (貨物に無関係) ・3.8m |
(貨物積載状態) ・3.8m ・指定道路では4.1m |
(貨物積載状態) ・3.8m ・指定道路では4.1m |
長さ | (貨物に無関係) ・車両全長:12.0m ・セミトレーラ(指定8車種):13.0m |
(貨物積載状態) ・12.0m ・高速自動車道走行の連結車両に は特例あり |
(貨物積載状態) ・はみ出しは車両長の10%を超えないこと ・他の車両を牽引する場合は25.0m以下 |
車両総重量 | (貨物積載状態) ・車両長、軸距に応じて20~25トン ・セミトレーラは最遠軸距に応じて20~28トン ・特例8車種は367トン |
(貨物積載状態) ・一般道20トン ・指定道路25トン ・バン型、フルトレーラに限り特例あり |
(貨物積載状態) ・車検証の最大積載量以下 |
コンプライアンスが叫ばれる現在、これらの法に違反すると運送会社だけではなく、荷主も大きなペナルティを受けることになってしまいます。
では、この制限値以内の貨物しか運べないのかというと、それでは日本経済が行き詰まってしまうため、それぞれに「特例申請」があります。
注意点は、「道路運送車両法で基準緩和された車両は、“分割不可能な貨物”の輸送しかできない」、つまり、「いわゆる“ばら積み”はできない」ということです。ただし、特例 8 車種においては、安全上の処置を条件として“ばら積み”が許可されています。
では、「その制限を超える貨物の輸送限界はどこまでか?」という点については、道路、道路構造物状況、道路沿線状況、交通状況等、さまざまな要因によって異なるため、一概には規定できません。
筆者の経験から言えば、「高さ」は上空の障害物を全てチェックして障害物がないことを証明すれば、各法の特例申請で許可されるケースが多く、かつ 4.1m まで申請不要の「指定道路」も増えています(日本の道路の高さの建築限界は 4.5m)。
「幅」は基本的に 3.5m を超えると許可取得が難しくなります(日本の車線幅は 3.5m)。
「長さ」は全ての交差点、曲線路をチェックして障害とならないことを証明し、誘導体制等の安全対策が認められれば許可されるケースが多くあります。
「重量」はセミトレーラ連結車両で車両総重量 44t以下に関しては許可が出やすいです。それ以上に関しては、障害となる橋梁等道路構造物の調査、強度検討を行い、強度的に十分耐えうると道路管理者が判断すれば許可されるケースがあります。
筆者の経験上、一般公道を輸送した最大重量の貨物は「浜岡原子力発電所の核反応容器(RPV)」で、輸送架台を含めて約 900tの RPV を 12km 輸送したことがあります。もちろん一般公道とはいえ、橋梁は事前に補強設計済みで、一般車両には全面迂回のご協力をいただいて実施しました。
http://www.jta.or.jp/rodotaisaku/kyogikai/pdf/Shipper%20recommendation%20system%20Leaflet.pdf