”COOL CHOICE”とは?
“COOL CHOICE”とは、「2030年度に温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減する」という政府目標の達成のため、日常のなかで地球温暖化対策につながるモノの購入や行動の「賢い選択」を促す活動のことで、環境省を中心に推進されています。
施策としては、室温28度でも快適に過ごすことができる服装を奨励する「クールビズ」が有名で、すでに多くの企業や官公庁などで定着しています。また、3R(ごみの削減:Reduce、再利用:Reuse、リサイクル:Recycle)や節電もCOOL CHOICEの基本行動となっています。
運輸部門では、旅行や移動の際に、鉄道などのCO2排出量の少ない交通手段を選ぶ「smart move(スマートムーブ)」、車の運転時に急発進やアイドリングをせずCO2の排出量を抑える「エコドライブ」などがあります。
物流の”COOL CHOICE”、できるだけ一回で受け取りませんかキャンペーン
今年の3月29日に、新たに「COOL CHOICE できるだけ一回で受け取りませんかキャンペーン~みんなで宅配便再配達防止に取り組むプロジェクト~」が立ち上げられ、6月15日時点で31団体、101社からの賛同が得られています。本プロジェクトは、宅配便の再配達による環境負荷の増加や社会的損失を防ぐことが目的となっていますが、その他にも配達ドライバー不足への対応策、宅配業者の労働条件の改善など、物流業界にプラスの影響を与えることが期待されます。
宅配便の再配達問題とは?
昨今のインターネット通販の利用拡大の影響を受け、宅配便の数は年々増加傾向にあります。国土交通省によると、2015年度の宅配便取扱個数は約37億4,493万個、そのうち98.9%はトラック運送となっており、航空等利用運送は全体のわずか1.1%にすぎません。前年比では、宅配便取扱個数は全体で1億3,114万個の増加、増加率は3.6%でした。トラック運送数に限ると3.8%の増加となりましたが、航空等利用運送数は前年よりも減少しています。
図 宅配便取扱実績の推移
出典:国土交通省資料より日通総研作成
宅配便取扱個数が増えれば、その分宅配業者は儲かるためハッピーなのではないでしょうか?実は、近年はそうではないのです。では、何が宅配業者を困らせているのでしょう。原因としては、大きく分けて2つあると言われています。
1つめは、再配達の問題です。近年はライフスタイルの変化による核家族や共働き世帯が増えており、日中誰も家にいないため荷物を受け取れない家庭が多くなっています。昔は隣近所へ預けたりもしたそうですが、近年はご近所関係も希薄になっていたり、プライバシー保護の観点や受け取った・受け取っていないなどのトラブルの元となるのを防ぐため、原則隣近所へ預けることはなくなっています。そうすると、宅配便は一回で配達されず再配達されることになりますが、その際もまた受け取ってもらえないと再々配達となってしまい、配達ドライバーにかなりの負担がかかります。その他、宅配時に在宅している場合でも、「いつも来る配達員と違ったため用心して出なかった」「化粧をしていなかったため出なかった(女性の例)」など、居留守を使うケースもあるようです。
2つめの原因は、配達ドライバーが足りないことです。配達するモノが増えても、運ぶヒトがいなければ、当然モノを運ぶことはできません。今までは、配達ドライバーが残業や休日出勤をしたり、お昼休憩を取らなかったりというように、かなり無理をしたうえでかろうじて私たちにモノを配達することができていました。しかしこういった「無理」も、限界にきています。また、このような過酷な勤務状況では、新しい人材を採用できなかったり、仕事がきついため辞めてしまう人も出てきたりします。そのため、宅配業者の現場職は万年人手不足の状況となっているのです。
環境省の本キャンペーンページによると、宅配便の再配達は全体の約2割であり、消費されている労働力は、トラックドライバーの約1割にあたる9万人の労働時間に相当する1.8億時間、そして、年間約42万トンのCO2排出量(JR山手線の内側の約2.5倍の面積の杉林のCO2年間吸収量に相当)が増加しているそうです。
この「全体の約2割」が再配達となっているという数字はよく耳にしますが、これはあくまでも全体の平均値、つまり、「to B」(法人相手)を含めた全国の平均値となっており、現場の事情に詳しい方の話では、「to C」(個人相手)に限定すると再配達の割合は、実に5~6割にもなるということです。
私たちが今できること
私たちが宅配便を一回で受け取ることができれば、宅配業者も配送ドライバーもここまで苦労することはなく、燃料の使用量や排気ガス量なども削減されるため、地球にとっても「エコ」な選択=COOL CHOICEとなります。
本キャンペーンは、2つのアクションを取るよう呼びかけを行っています。まず1つめは、「受け取る時間帯を指定すること」。確実に受け取れる時間帯を指定し、できるだけ一回で受け取ります。2つめは、「受け取る場所を指定すること」。駅やマンションなどに設置されている宅配便受取ロッカーや、コンビニエンスストアや宅配業者の営業所など、確実に受け取ることができる場所を指定して、できるだけ一回で受け取ります。
出典:環境省ホームページ
荷物の受取方法は多様化しており、宅配ボックスが設置されているマンションでなくても、個人宅用の宅配ボックスも販売されています。通常の宅配ボックスは1個入れるとそれ以上受け取ることができませんが、2個受け取れるタイプや、保冷タイプなど、様々な種類が出てきています。
昨年よりパナソニック株式会社が福井県あわら市にて、共働きの106世帯を対象に宅配ボックスを無償配布する実証実験を行ったところ、再配達率が49%から8%にまで減少したという結果もあり、宅配ボックスによる再配達削減への効果が期待されています。
~多様化する受取方法~
○宅急便店頭受取りサービス「ロッカー受取り」(クロネコメンバーズ用)
お届け予定/不在連絡メールから、ロッカーを受取場所に指定できるサービス。ロッカーのほか、ヤマト運輸営業所、コンビニ、勤め先などへの転送も可能です。また、スマホアプリLINEとの連携で、配達状況の確認、日時変更、通知、送り状の発行が可能になり、ますます便利になっています。
LINEと連携した宅急便サービス
出典:ヤマト運輸ホームページ
○コンビニでの受取り
宅配便の受取場所をコンビニに指定することが可能ですが、宅配業者により受け取ることができるコンビニが異なります(表参照)。商品の受取りには、レジでのバーコード提示、またはコンビニ内端末でのお問い合わせ番号と認証番号の入力が必要となります。受取期限も忘れずに確認しましょう。
出典:各社ホームページより日通総研作成(2017年6月22日時点)
○鉄道駅の宅配便受取ロッカーでの受取り
はこぽす(日本郵便)、PUDOステーション(ヤマト運輸)などが設置されている駅での受け取りが可能です。通勤や外出のついでに受け取ることができれば便利ですね。ご自宅や勤務先などの最寄駅や途中利用駅に設置されているかどうか、是非調べてみてください。
○道の駅の宅配便受取ロッカーでの受取り
鉄道駅と比較するとまだまだ普及されていませんが、昨年10月に「はこぽす」が道の駅庄和(埼玉県春日部市)に設置されました。周辺住民の方々を中心に利用されています。
そのほか、コインランドリーやバスターミナル、スーパー、駐車場などにも宅配便受取ロッカーの設置が進んでいますので、受取方法はますます多様化していくことでしょう。
ドイツやイギリスでは、荷物を車のトランクへ配達する実証実験も行われています。また、ヤマト運輸や日本郵便、楽天は、初回の配達で受け取るとポイントを付与するなど、消費者にインセンティブを与えるサービスを始めていますので、ご興味のある方は調べてみてください。
JR東日本 駅の宅配便受取ロッカー(はこぽす、PUDOステーション)
出典:JR東日本 駅の宅配受取ロッカー ご案内
宅配便受取ロッカー利用の流れ(PUDOステーションの例)
出典:Packcity Japan ホームページ
○職場での受取り
ある会社の例では、共働きや単身家庭など、日中家に宅配便を受け取れる人がいない家庭の従業員については、「職場での受取り」を推奨しており、インターネットなどでの個人的な買い物も職場宛に送付しているそうです。会社などの事務所では、営業時間中は誰かしら受け取れる方がいるところがほとんどだと思いますので、一回で受け取れる可能性が高くなります。
本キャンペーンに積極的に参加している一般社団法人 日本物流団体連合会でも、取り組みの一環として「職場受取りの奨励」を推進しており、現在実行中ですが、担当配達員の方からは「大変助かる」と高い評価を得ているとのこと。本社などの大規模な事務所では実施に時間がかかるかもしれませんが、小規模な支店や事務所から導入を検討してみてはいかがでしょうか。今後のCSRメニューにもなりえるでしょう。
上記のように、外で宅配便を受け取る方法の選択肢は増えていますが、例えば、ヤマト運輸の受取ロッカーの場合、対象商品は、宅急便発払い・宅急便コンパクト・パソコン宅急便発払い・超速宅急便発払い、かつ縦・横・高さの三辺計が100cm以内で重量が10kg以内の荷物と限られています。この大きさを上回る商品はロッカーに入らず、また、水物や家電などの重量物はロッカーで受け取った後、自宅へ持ち帰ることが困難なこともあるので、そのような場合は自宅での受け取りが便利です。その際は確実に受け取ることができる日時を指定して、自宅や指定場所に届けてもらいましょう。こういう時こそ宅配サービスの大切さが身に染みてわかります。
また、受領印が不要で、郵便受けにて受け取れるサービスもあるので、これらもあわせて利用が進むといいと思います。車両やドライバーなどの資源は有限ですから、特大品や重量物など、本当に配達が必要なところへリソースが配分されなければなりません。
○郵便受けに配達可能なサービス例
ゆうパケット(日本郵便)、クリックポスト(日本郵便)、レターパックライト(日本郵便)、ネコポス(ヤマト運輸)、飛脚メール便(佐川急便)、飛脚ゆうメール便(佐川急便)など
◆おわりに~Let’s COOL CHOICE!~
再配達の依頼や、到着までの待ち時間など、不便を感じたことはないでしょうか?受取方法を変えることにより再配達を無くすことは、宅配業者や地球環境のためだけではなく、私たち利用者がより便利に、より快適に宅配サービスを利用できるということです。また、このまま問題が深刻化すると、再配達に関しては有料になる可能性も否めないため、今から行動を変革しておくことが大切です。
「送料無料」という言葉が出回っていますが、これは物流にかかるコストがあたかもゼロであるというような誤解を招く、誤った言葉であると考えます。送料は購入者にとっては「無料」であるかもしれませんが、売り手側が「負担」しているだけで、配送には車両代、燃料代、人件費など多くのコストがかかっており、再配達によりそのコストは何倍にも膨らんでしまいます。その事実を正しく認識し、私たち一人ひとりが宅配便をできるだけ一回で受け取ることで、きっと未来は変えられるはずです。Let’s COOL CHOICE! よりよい未来へ一歩踏み出しましょう。