はじめに
NX総合研究所は今年で設立して63年、日本で最初の物流専門のコンサルティング会社です。50名以上のコンサルタントが年間で200件以上の調査やコンサルティングを実施しており、海外においても30か国以上の国において案件実績があります。
「物流コスト削減」「作業の効率化」「物流品質向上」という一般的なテーマに加え、「サプライチェーンの全体最適化」「物流事業者の経営支援」などのコンサルティング業務をやっています。改善提言をするだけでなく、改善実行までのサポートをするスタイルが当社の持ち味です。
近年は「将来を見据えたあるべき物流の姿を実現するための物流戦略策定」というコンサルティングの依頼が増えています。本稿ではその概要について説明します
物流戦略策定支援の代表的な3つのテーマについて
物流戦略策定支援コンサルティングの代表的なテーマは下記の3つです。
「物流事業戦略」は将来を見据えた物流事業戦略の策定、あるべき物流の姿の提言をするという内容で、現状の課題を把握した上で、5年後、10年後までに実現すべきことをロードマップとして作成してそれを実現するサポートをするコンサルティングです。
「物流管理施策」は全体最適を目指した納期・コスト・在庫を管理する仕組みの構築で、管理するための指標、評価する仕組みと体制作りをサポートするコンサルティングです。
「グローバル戦略」は世界中に工場と販売拠点を持つ企業のグローバルな物流ネットワーク再編で、過去1年間の各拠点の入出荷実績と在庫実績のデータから物流マップを作成して、物流コスト、納期リードタイムの面での最適な拠点配置を検討するコンサルティングです。
これら3つの代表的なテーマのうちひとつだけ、あるいは2つ、3つを混合したコンサルティングを実施することもあります。
物流戦略策定支援コンサルティングのサポート体制には「企画型」と「伴走型」と「アドバイザリー型」の3種類があります。「企画型」はお客様から資料やデータを入手して、現状把握をして課題抽出と解決策立案を当社で行います。「伴走型」はお客様の社内プロジェクトチームに入り込んで、基礎調査から戦略策定までをお客様と一緒に行います。「アドバイザリー型」はお客様の考えた戦略に対して必要に応じて当社が助言をします。
本稿で説明するのは上記の代表的なテーマ3つが混在した伴走型のコンサルティング事例です。
物流戦略策定支援コンサルティング事例の背景と課題
本稿で事例紹介するのは自動車部品製造会社のA社です。世界中に生産工場と販売拠点を持ち、海外の売上が全体の70%を占めています。物流機能は調達物流と販売物流の2つに大別され、物流管理部の中に5名の調達物流チームと10名の販売物流チームがあります。
輸送モードは航空輸送、海上輸送、陸上輸送があります。日本国外の会社との輸出入取引の建値(貿易条件:インコタームズ)の大半がFCA(フリーキャリア)・FOB(フリーオンボード)で海上運賃・航空運賃の着払いが多く、輸送コストは航空輸送が全体の8割を占めています。現在の課題は海外を含めた在庫と物流のコントロール。販売物流は現地法人や代理店がコントロールすることがあり、全体最適のための現状把握もできていない状況です。また航空輸送が多いことも物流コストを押し上げる要因になっています。
国際輸送のフォワーダーは5社を起用。集約による物流コスト削減を期待できますが、集約すると国によってサービスレベルが下がる懸念もあります。また国際物流業務関連の事務作業、ブッキングやインボイス・パッキングリストなどの書類作成が長時間労働の原因となっており、物流管理部のメンバーは他部署よりも残業時間が多い傾向があります。
経営陣より物流業務の効率化を実施するよう指示があり、5~10年後の将来ビジョンに基づいた物流改革を遂行したいと考えていますが、物流管理部のメンバーは日常業務に追われてじっくり考える時間がなく、一緒に考えてくれるパートナーが必要だと感じています。
物流戦略策定支援コンサルティングのビジョン策定と取組みステップ
お客様の背景と課題をお聞きした後で、当社から提案したビジョン策定支援の内容がこちらです。
まず現状の不満点や懸念、将来課題を踏まえた5~10年後の物流の目指す姿を明確にしていきます。物流改革で重視するテーマとして「全体最適化のための物流サービスの組織体制の整備」、「グローバルな拠点戦略の立案」、「適切な輸送モードを選択することによる輸送コストの削減」、「業務改善のためのルール作り」などを挙げて深掘りして施策を検討する内容になっています。
「物流戦略支援コンサルティング」の内容は大きく4つのステップに分かれていて、最初のステップが「目指す姿の定義」です。
ステップ1では「資料とデータによる現状把握」をした上で物流管理部の方々と2週間に1回の頻度で2時間~3時間の会議を行ないます。会議の中でディスカッションしながら、目指す姿の定義をします。ここは大変重要なステップで、会社の今後の経営戦略とリンクすることもあり、STEP1の中間報告では経営陣が参加して「目指す姿の定義」のレビューをします。
次のステップ2では「課題の抽出」を行ないます。現状と目指す姿の比較をして、そのギャップを埋めるためには何が必要なのかを一緒に考えます。ステップ3で「課題に対する施策」を検討して、その施策を具体化するための目標設定と評価方法を取り決め、5年後、10年後までに実現すべきことをロードマップとして作成します。
ステップ4は実行支援です。ステップ3までが伴走型でステップ4以降はアドバイザリー型というケースもあります。本稿の事例ではステップ1と2で約3ヵ月、ステップ4までで約6カ月というスケジュールで進めました。
物流戦略策定支援コンサルティングに必要な資料・データ
こちらはお客様の物流業務の現状把握とこの企業の経営戦略を確認するために提出を依頼する一般的な資料の一覧です。
図⑥:提供を依頼する一般的な資料
経営戦略の部分では過去10年間の生産と販売の推移、今後の生産・販売計画と国内・海外拠点の在庫一覧の提出を依頼します。
物流の部分では調達の部材倉庫の業務内容、販売の製品倉庫の業務内容、モノと情報の流れ、物流フロー、業務フローなどの提出を依頼しています。提供が難しい資料については当社が視察やヒアリングして作成することもあります。
そしてこちらが提供を依頼する一般的なデータの一覧です。
過去1年間の調達物流、販売物流の入出荷実績と在庫実績。これは物流戦略策定支援以外の物流コンサルティングにおいても必須となる情報です。本稿の事例のお客様は海外展開されているので三国間貿易、輸出入取引の実績データも依頼しました。
海上輸送、航空輸送、陸上輸送の物流コスト算出のために件数、トン数、コンテナ本数などの情報も提供頂きました。幸いこのお客様は業務システムでSAPを利用していて、データ入力に手間をかけてかなり細かいデータまで入力されていました。そういった苦労のおかげで、データの抽出と分析をスムースに行うことができました。
こんなにたくさんの資料やデータ用意するのは大変ですし、資料の精査とデータ分析にも時間がかかります。しかしデータに基づいた正確な現状把握を行うことで課題が明確になります。また目指す姿とのギャップを数値化しておくと、具体的な目標を立てて、数値でその評価をすることができます。
物流戦略の策定
こちらがこの顧客の「物流戦略策定」の内容をまとめたものです。本稿では文字数の関係で全てを説明することはできないので、抜粋した内容になります。
本ブログはここまでとなりますが、お役立ち資料では上記の「課題と戦略策定」とロードマップについて詳しく解説しています。物流戦略策定支援のコンサルティングに興味のある方は是非ダウンロードして下さい。
(この記事は、2024年7月1日時点の状況をもとに書かれました。)