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世界各地の物流自動化トレンド分析

世界各地の物流自動化トレンド分析

はじめに

当記事では、世界各地の倉庫自動化および自動搬送装置の現状とトレンドを詳しく解説します。北米、欧州、アジア太平洋、中東およびアフリカ、ラテンアメリカの地域ごとの現状や動向、自動化技術の導入事例を紹介し、物流業界における自動化の未来を探ります。その中で、日本企業はどのように対応していくべきかをいっしょに考えましょう。物流業界自動化のトレンドを知りたい方は必見です。

自動化が今後の世界の物流をリードする

MordorIntelligenceの情報によると、2020年から2029年の間に、グローバルな倉庫の自動化市場は、年平均成長率12.5%で成長すると予測されています。その中で、DX化推進とECは依然として倉庫自動化市場の成長の原動力となっています。

物流サブセクター別の自動化物流設備への投資比率(%)
出所:MordorIntelligenceのデータをもとに執筆者作成

同時に、バンク・オブ・アメリカによると、2025年までに、製造業の45%がロボット技術によって実現されるとされています。このトレンドに対応するために、Raymond Limited(インドの織物大手)やFoxconn(鴻海精密)などの大企業は、それぞれ1万人と6万人の労働者を置き換える(または置き換える計画を立てている)ことで、生産物流において自動化技術を工場に統合しています。

倉庫の自動化は、コスト削減や製品の誤配送の減少という点で大きな利便性を提供していますが、実際のデータによると、世界全体で80%の倉庫は「まだ自動化要素がまったくなし」と報告されています。さらに、コンベヤ、ソーティングマシン、ピッキング・パッキングソリューションなどの他の装置(必ずしも自動化ではない)を使用している倉庫は、全体の倉庫の15%を占めていますが、現在、自動化されているのはわずか5%の倉庫です。

それでは、世界各地の物流自動化のトレンドを紹介します。

北米市場:ECが主要な推進力となる

北米市場では、倉庫の自動化を推進する最大の要因は、依然としてECの発展です。Ware2Go(配送および倉庫管理ソリューションを提供する企業)の調査によれば、コロナ後に米国の労働者の67%が在宅勤務を行っており、オンラインショッピングは依然として消費の主な形態の一つとなっています。そのため、半数以上の米国企業がこの市場の変化に対応するために自動化への投資を増やす意向を示しています。2020年、Honeywell Intelligrated Automation Investment(自動化物流ソリューションを提供する企業)の調査によれば、EC、食品、飲料における物流自動化への投資が最も多いとされています。

これにより、2022年から2027年までの間、北米の倉庫自動化市場は年平均9.6%の複合成長率で成長する見込みです。北米地域では、RGV(Rail Guided Vehicle)などの自動化ソリューションが衣料品、化粧品、産業部品などで広く活用されています。また、多くの物流企業も、人手不足に対応するためにAGV(Automated Guided Vehicle)などのソリューションをテストしています。

例えば、2020年4月には、Ocado社(自動化物流ソリューションを提供する企業)が北米で初めてのロボット自動化倉庫を導入することを発表しました。Empire社のカナダのオンタリオ州にあるフルフィルメントセンターでテストを開始しています。

また、2021年5月には、ABBロボティクス社がCam Industrial社(自動化物流ソリューションを提供する企業)とRemtech Systems(自動化物流ソリューションを提供する企業)との協力で、カナダのアルバータ州とブリティッシュコロンビア州で物流およびサプライチェーンの自動化ソリューションを導入しました。

消費者需要に基づいて、物流センターが柔軟性、スピード、精度への要求がますます高まる中、そのニーズに応えるためのものとみられています。

欧州:ECと自動化技術の両方が推進力となる

2022年から2027年の間における欧州地域の成長率予測はより高く、13.67%に達すると予想されています。インダストリー4.0の発祥地の一つであるドイツは、倉庫自動化分野でもリーディングカントリーの一つです。International Federation of Robotics(IFR/国際ロボット連盟)の2022年のデータによれば、ドイツは産業用ロボット密度が最も高い国であり(10,000人の従業員あたりの産業用ロボット数は415台)、韓国(1012台)とシンガポール(730台)に次いで世界第三位にあります。ちなみに第四位は日本(397台)、第五位は中国(392台)、第六位はスウェーデン(343台)、第七位は香港(333台)、第八位はスイス(296台)、第九位は台湾(292台)、第十位は米国(285台)との順位になっています。

また、西ヨーロッパでは優れた物流自動化装置メーカーが多く存在し、ドイツ、イタリア、フランス、オランダ、スペインなどに広がっています。中央ヨーロッパと東ヨーロッパは欧州内で急速に発展している地域であり、ポーランドとチェコ共和国は経済潜在力のある物流センターとなりつつあります。ただし、現在の地政学的な環境、ロシアとウクライナの紛争を含む状況により、一部の拡大計画や投資計画が一時停止されています。

COVID-19によってもたらされた一連の影響は、欧州地域の倉庫自動化の発展を推進する要因の一つですが、技術自体の進歩も大きな推進力の一つとなっています。例えば、2020年5月、DHLはシスコと協力し、欧州の3つの大型倉庫ビジネスにIoTを導入すると発表しました。

同時に、AMR(Autonomous Mobile Robot)も欧州全体でますます人気を集めています。例えば、2022年2月には、DHLがドイツのブラウンシュヴァイクにあるオンラインオークションサイト1-2-3.tvのために、ロボットピッキングを備えた完全自動の小物部品倉庫物流システム(small parts warehouse logistics system)を導入しました。さらにそれに加えて、欧州のAMRロボットメーカーも投資のペースを加速させています。例えば、2022年5月にはLocus Robotics社が倉庫用AMR生産ラインを拡大すると発表しました。同年6月には、シュトゥットガルトのLogiMAT展示会でek robotics社が世界をリードするインテリジェントロボット開発企業であるOTTO Motors社とのグローバルな技術パートナーシップを発表しました。

欧州では、ECの成長と自動化技術の進歩の両方が倉庫自動化の発展を推進しています。この地域では、技術革新と労働力不足に対応するために、自動化ソリューションが広範囲に導入されています。これにより、効率性の向上、品質の向上、コスト削減などの利点が得られています。欧州の倉庫業界は、持続的な成長と競争力を維持するために、さらなる自動化への投資と技術の採用を追求するでしょう。

アジア太平洋地域

アジア太平洋地域では、さらなる成長が見込まれています。2022年から2027年の間に、アジア太平洋の倉庫自動化市場は、年平均15.5%の複合成長率で成長すると予測されています。この地域の成長は、ECと製造業の発展によって牽引されています。特に製造業は重要な市場シェアを占め、短期間でさまざまな製品を配送する需要の増加に伴い、効率的な在庫管理や返品用のリバースロジスティクスシステムへの需要がさらに高まっています。シャトルピッキングシステムや自動ストレージおよび移動ロボットプラットフォームなどが急速に成長しています。

2022年にZebra Technologies社が実施した「Warehousing Vision Study(倉庫ビジョン調査)」で、オーストラリア、日本、中国、インド、シンガポールなどからの1,500人以上の倉庫管理者などの従業員を対象に調査が行われました。対象企業の調査によると、27%のアジア太平洋地域の倉庫で既にAMRを採用しています。今後5年間で、この割合はアジア太平洋地域では92%に達すると予測されています。

日本や韓国などの先進国はロボット分野に注目しており、例えば2020年8月には村田機械がAlpen Co. Ltd.と協力して日本初の3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」を構築することで合意しました。ALPHABOTは、Alpenグループの主要な配送センターの1つであるAlpen Komaki配送センターに導入され、収納能力を増加させ、ピッキング、仕分け、梱包などの作業を約60%効率化できています。このシステムは2021年7月に正式に稼働しました。一方で、中国も世界有数の製造大国であり、高い自動化率、広範な倉庫ロボットの使用など、倉庫自動技術への需要が非常に高いです。東南アジアもECの急速な発展により、コンベヤピッキングなどの自動化機器への需要が高くなっています。

インドの主要8都市における倉庫在庫(万平米)
出所:JLL

さらに、南アジアの主要市場であるインドも無視できません。インドの倉庫業界は、急速に発展する製造業や大規模な物流業に遅れを取らないように大きな変革を遂げています。さらに、インドのECの発展により、倉庫業務が大幅に増加しています。この急速な拡大は、輸送の遅延、経験豊富な労働力の不足など、さまざまな新たな障壁に直面しており、関係者は従来の戦略を超えて、ロボットをサポートする自動化システムに取り組んでいます。例えば、EC巨人であるAmazonは、インドに50億ドルを投資し、全国的な自動化倉庫を構築する計画を立てています。

中東およびアフリカ地域

中東およびアフリカ地域では、地域の発展はより不均衡です。2020年の中東およびアフリカの自動化物流市場規模は14.83億ドルであり、2026年には18.86億ドルに達すると予測されており、2021年から2026年にかけては年平均成長率4.5%で成長する見込みです。中東とアフリカもECの波に乗っており、例えば2020年にはUAEのEC市場規模が39億ドルに達し、前年比53%の増加となりました。また、中東地域では小売り、飲食、製薬などの産業における自動化物流ソリューションへの需要も増加しています。

例えば、2021年1月、Landmark GroupはUAEのドバイに自動化配送センターを新設し、この多国籍小売業者は物流業務を既存の5つの従来型物流センターを部分的に統合することができます。また、2021年9月、Spimaco社(サウジアラビアの主要な製薬生産および保管施設)は、既存の施設を拡大するために自動ラックなどを備えた物流センターを増設することを決定しました。

一方、アフリカ地域では、自動マテリアルハンドリング(AMH)ソリューションの需要が大きいです。南アフリカはアフリカ大陸最大の経済体であり、同時に主要な倉庫自動化市場です。2020年、南アフリカの国内総生産は3700億ドルを超えました。南アフリカは整備された物流ネットワークを持つことから、EC業界の将来性は非常に広がりやすいです。また、観光業もAMH装置の需要増加のもう一つの主要な要因であり、観光業は周辺の小売りや飲食場所に影響を与えています。

欧米やアジア太平洋地域に比べて、中東とアフリカ地域では食品・飲料業界が最も多くのAMH装置を購入しています。そのなか、自動搬送機が最も売れている装置です。多くの食品加工施設では、厳しい温度条件に耐えられる汚染のない特殊な搬送機が重要な効率向上要素となっています。

このような動向から、中東とアフリカ地域では自動化物流市場が着実に成長しており、今後も需要が増加すると予測されています。これに伴い、地域内での自動化技術の導入や物流インフラの整備が進むことで、さまざまな産業の効率化や競争力の向上が期待されます。

ラテンアメリカ地域

ラテンアメリカ地域では、自動化の展望が明るく、食品飲料業界が需要の主要な分野となっています。

中東やアフリカと同程度の年平均成長率を示しており、2021年から2026年にかけて、自動搬送装置市場は年平均成長率5.4%で成長すると予測されています。ラテンアメリカ地域は経済が拡大し、資源が豊富で人口も多いため、自動化市場の展望は明るいと言えます。また、中産階級の人口が急速に増加しており、自動化への需要も増加する見込みです。さらに、ECへの投資も増加しています。たとえば、PayPal社やDragoneer社(投資企業)がアルゼンチンのEC大手MercadoLibreにそれぞれ7.5億ドルと1億ドルの投資を行い、アルゼンチン、ブラジル、メキシコなどで新たな配送センターが相次いで設立されています。

ブラジルでは、自動化によるROI(投資収益率)が非常に高く、2〜4年で100%の投資額が回収されます。また、ブラジルでは、運営コストの削減やプロセスの非効率性を根本的に改善するために自動化を実施することが重要であり、ピッキングとパレット取扱いの自動化が主要な領域となります。

一方、メキシコはこの地域で最高の成長率を見込んでいます。過去には、一部の企業がメキシコへの投資を完全に避けるか、安価な労働力にのみ投入していましたが、メキシコの自動化産業はより高度化しつつあり、他のラテンアメリカ主要国と比べて競争優位性があります。さらに、A3 Mexico(メキシコ自動化促進協会)は、自動化の利点を広めるとともに、利害関係者や国の自動化コミュニティメンバー間の交流を促進しています。また、新空港の建設や既存の空港インフラの強化への投資が増加しているため、メキシコではマテハンシステムの導入も増加する見込みです。

現時点では、メキシコは完全自動化の事例がなく、ハイブリッド自動化を好む傾向にあります。メキシコでは熟練労働力が不足しているため、既存の従業員が最小限のトレーニングでスキルを習得できるハイブリッド自動化が重要とされています。そのため、メキシコ市場では協働ロボットや半自動化ソリューションへの需要が非常に高くなっています。この傾向は、タコやサンマ、エビ、ロブスターなどの複雑な製品を加工する海産加工企業で特に顕著です。

業界レベルでは、ラテンアメリカ地域の食品飲料業界が自動化の発展を主導することになります。この地域では、ブラジルが冷凍食品や肉製品を輸出し、アルゼンチンは包装および食品加工分野で先導的な国となっています。メキシコは大規模な飲料産業を持っています。コロンビアはアメリカに近く、貿易協定によって食品飲料業界は過去10年間で50%以上成長しました。ペルーとチリは海産物や冷凍食品の処理においてリードしています。食品飲料業界の高い成長見通しと、自動化サービスプロバイダーの地域への浸透が、この業界の物流自動化への需要を推進しています。

 

おわりに

世界各地域の倉庫自動化および自動搬送装置の現状とトレンドについてご説明してきました。ここからは、ロボットの適用が各地域で主流のトレンドとなっており、将来的には非常に広範な可能性があることが明らかと言っても過言ではありません。これは必然的にロボット市場の競争を激化させるものであり、日本のロボティクス企業が自身の核心競争力を強め、他の国や地域のニーズに対応する能力を確立することができるかどうかは、日本企業のグローバル戦略の伸びしろに影響を与えるでしょう。

(この記事は、2024年6月13日時点の状況をもとに書かれました。)

この記事の著者

◆出身地:中国 ◆血液型:AB型 ◆趣味:語学勉強、ランニング、ラーメン、旅行
2015年 高崎商科大学 商学部 商学科 卒業
【得意分野】 ・国際輸送関連業務 ・中国保税区 ・物流ネットワーク再構築

最近、ついに30代に突入しました。時間が経つのが早すぎると嘆きながら、まだまだ仕事においても、生活においても勉強したいものがいっぱいあることに気づきました。
そして、①「ルーティンでやり続けていること」②「ルーティンでやってきたが、効率が悪い、またそこまで自分に役立たないこと」③「ずっとやりたいと思っているが、始めていないこと」の3種類に分けて、30代からの時間をもっと大切にしたいと思っています。
ちなみに私の場合は:
①毎日の運動; 毎日の語学勉強 etc.
②これまでは語学の単語暗記をノートにひたすら書いていたが、今後はnotionというメモアプリへの切り替え;ニュースを読む時間の短縮 etc.
③Python; Excel VBA etc.
5年後は自分にどんな効果があるか、自分で検証したいと思いますが、皆さんは如何でしょうか。

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