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倉庫の火災防止対策 ~大規模倉庫における火災の教訓と訓練の重要性~

倉庫の火災防止対策 ~大規模倉庫における火災の教訓と訓練の重要性~

はじめに

月日が経つのは早いもので、今年も半分が過ぎようとしており、季節は梅雨、そして夏に向かっています。この時期に敢えて火災について取り上げるのは、季節感がズレているとのご指摘をいただきそうですが、物流に欠かせない倉庫施設については、通年での防火対策が必要になります。倉庫の火災については、被害が甚大であったり、大規模倉庫であったりすると、大きく報道されます。しかし、それ以外の火災については、あまり報道されていないように感じます。大規模倉庫火災では、2017年2月の埼玉県入間郡三芳町の延べ床面積約7万㎡の倉庫で約4万5,000㎡が焼け、鎮火に約12日を要した火災は記憶にあるかと思います。また、2020年4月には、宮城県岩沼市の延床面積約4万4,000㎡の物流倉庫が全焼、2022年8月には、神戸市中央区の7階建て延床面積9,000㎡の倉庫で約1,300㎡が焼失、同年同月、茨城県守谷市の延べ床面積約5,000㎡の物流倉庫が全焼し、鎮火に8日を要したとのことです。倉庫の火災は、大規模な倉庫も含めて決して珍しいことではありません。ただいま紹介した4件の倉庫火災においては、幸いにも犠牲者は出ていませんが、一歩間違えれば、大惨事になっていたことは想像に難くありません。特に2017年2月の埼玉県入間郡三芳町の倉庫火災では、この火災を踏まえた防火対策等の報告書も作成されています。本稿では、倉庫火災の実態やその危険性、大規模倉庫の法令違反の実態、そして報告書の内容等から得られる教訓などを改めて確認し、倉庫の防火対策について考えてみたいと思います。

倉庫火災の実態

令和4年10月28日に消防庁が発表した「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)」(以下、「火災状況報告」という)によると、令和3年(1~12 月)における出火件数は、35,222 件で、おおよそ1日あたり96件、15分ごとに1件の火災が発生したとされています。この35,222件のうち、建物火災は、19,549 件で全体の55.5%にあたります。建物火災に次いで、車両火災3,512件(10.0%)、林野火災1,227件(3.5%)です。そして火災状況報告の「建物用途別の火災発生状況」によると、建物火災19,549件の建物用途別の内訳は、下記のとおりです。最も多いのは、住宅(一般住宅、共同住宅、併用住宅の合計)の10,936件(55.9%)です。そして、複合用途、工場・作業場、事務所等と続き、倉庫の火災が461件(2.4%)あります。倉庫火災のこの件数を多いと捉えるか、少ないと捉えるかは、人それぞれだと思います。ただ、筆者の個人的感想として、若干ですが、飲食店よりも多く、毎日1件以上発生している計算になることなどから、かなり多いと感じます。また、冒頭の「はじめに」で紹介した4件の倉庫火災では、幸いにも死者の発生はありませんでした。しかし、火災状況報告では、倉庫火災で3名の死亡が報告されています。さらに、火災状況報告の「放火火災の発生状況」では、放火火災3,888件のうち、建物火災で1,643件(42.3%)あり、倉庫で41件(1.1%)となっています。

「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)」

建物火災の火元建物用途別の状況(令和3年中)

延べ面積1万㎡以上の倉庫の火災発生状況

宮城県岩沼市倉庫火災の画像

倉庫火災の危険性

倉庫は、物品の保管が主要な役割ですが、ECの拡大などを背景にいわゆる流通加工、発送業務など様々な物流機能を担うようになっており、自動化も進み大きな進化を遂げています。しかし、進化している倉庫施設ですが、既にご説明したように決して少なくない頻度で火災が発生しているといえます。最近の倉庫は、法令の規制もあり、耐火構造になっていることから火災に強いイメージを抱きがちですが、逆に倉庫故の脆弱性があることも事実です。倉庫の火災に対する脆弱性として一般に指摘されているのは、次のような点になります。

【火災に対する倉庫の脆弱性】

①可燃物品の多さ

保管物品が大量に存在するのが倉庫です。多品種の物品を取り扱えば、その中に可燃物も混じり、量も増える傾向があります。また、流通加工や商品の発送業務を行う倉庫では、多くの場合、大量の段ボールが存在します。特にボールは空気を多く含む構造のため、非常に燃えやすいものです。

②消火活動の困難さ(延焼しやすさ)

倉庫の場合、商品を太陽光から保護したり、温湿度を維持したりするなどの理由から窓が少ない建物になっています。無窓階などもあるため、消火活動が困難な構造になっている施設が多くあります。また、建物内にコンベアやラック類などの物流設備機器が多数あり、消防隊の進入を困難にしているケースもあります。そうした状況が延焼につながる可能性を高めます。

③避難の難しさ

上記②と同様の理由で、倉庫内にいる人の避難にも困難が生じると考えられます。特に大規模倉庫は、物流設備機器が多く設置されているため、避難経路を最短距離で移動できないことも想定されます。

④濃煙と有毒ガスの発生

保管物が危険品や化学品の場合、濃煙や有毒ガスの発生が想定されます。また、無窓階の場合、酸素の供給不足による不完全燃焼で濃煙と一酸化炭素などの有毒ガスが発生しやすく、発生した煙の排出も困難です。

以上のように、強固な耐火建物であっても、倉庫特有の脆弱性があり、火災への高い危険性を有することを強く認識しておく必要があると考えます。

大規模倉庫の法令違反の実態

冒頭に紹介した2017年2月の埼玉県入間郡三芳町の大規模倉庫火災を受けて国土交通省と消防庁は同年3月14日、第1回「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」(以下、「三芳町倉庫火災検討会」という)を開催しました。同検討会は三芳町で発生した倉庫の火災事故を受け、大型倉庫の防火対策と消防活動について議論を行うもので、同年6月末までに計4回の検討会が開催されました。その中で、同年4月12日に開催された第2回検討会の資料「(資料2-7)大規模倉庫に対する実態調査の結果」に興味深い内容があるので、紹介しておきます。この調査結果は、同年2月28日から倉庫の用途に供する部分の床面積が5万㎡以上の建築物を対象に、消防本部と特定行政庁が連携して調査対象の建築物への立入検査による実態調査を実施し、結果をまとめたものです。調査内容は、(1)建築物の概要、(2)消防法令違反及び建築基準法令違反の状況です。建物の耐火に関しては、建物延べ面積5万㎡以上の調査実施倉庫219のうち、耐火建築物が201(91.8%)、準耐火建築物が16(7.3%)、その他が2(0.9%)で、約9割が耐火建築物となっています。そして、消防法令違反に関して、消防用設備等の違反は、調査実施倉庫219のうち、「違反あり」が63(28.8%)にのぼっています。防火管理の実施状況については、同じく調査実施倉庫219のうち、防火管理者の選任届出の未届違反が36(17.1%)、消防計画の届出の未届違反が38(18.1%)、消防訓練の実施の未実施違反が19(9%)と報告されています。さらに、防火設備における閉鎖障害については、調査実施倉庫203のうち逆に防火設備の閉鎖障害なしが130(64%)であったとされています。多くの人が働く大規模な倉庫において、この実態は重く受け止めるべきではないかと考えます。

消防用設備等の違反状況

消防用設備等の違反

防火設備における閉鎖障害

埼玉県入間郡三芳町の大規模倉庫火災の概要

2017年2月16日に埼玉県三芳町で発生した大規模倉庫火災について少し説明させていただきます。前述の三芳町倉庫火災検討会が作成した「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会報告書(平成29年6月)」(以下、「三芳町倉庫火災検討会報告書」という)によると、当該倉庫の使用開始は、平成25年(2013年)7月20日です。建築規模は、階数は地上3階(地下0階)、建築面積26,977.99㎡、延べ面積71,891.59㎡、建物全体の幅は約 240m、奥行きは約109m、建築構造は鉄筋コンクリート造一部鉄骨されています。また、消防用設備等について、当該建物には、消防法の技術基準に従い、消防用設備等が設置されており、このうち従業者等の初期消火に用いられる消火器や消火栓等については、消火器324台、屋内消火栓63基、屋外消火栓12基、スプリンクラーヘッド(1階一部)261個が設置されていました。消防法の技術基準において、消火活動困難性の高い一定の高層階、地階、無窓階等に義務づけられている消火活動上必要な施設(排煙設備、連結散水設備、連結送水管等)については、当該建物は設置対象となっていませんでした。自衛消防組織が設置され、事業所の消防訓練において、消火訓練・避難訓練が定期に行われていました。在館者については、商品の搬入・仕分け・発送等に係る従業者が多数勤務しており、発災時には合計421名が在館していたと報告されています。なお、在館者が全員避難できたことに関し、報告書の避難状況によると、今回の火災では、無線の活用や各階の避難誘導班の連携などにより、在館者421名全員が屋外に避難したとされています。また、火災の覚知時間が、9時14分で、一部エリアでは夜勤者の終礼や朝礼のため、在館者が集合していたこともまとまった避難につながったとも考えられます。出火場所は、1階の端材室(倉庫内各所から専用のコンベヤにより運ばれてきた廃段ボールが開口部(2階部分)から落とされ、集積される場所)と呼ぼれる場所です。そこに大量の廃段ボールがあり、それらが激しく燃え広がっていたとされており、火災の発生から鎮火にいたるまで約12日間を要し、損害額は100億円を超えるとされています。

大規模倉庫における火災の教訓

上記でご説明したように、埼玉県入間郡三芳町の倉庫は、稼働が始まって約3年半の老朽化とは無縁の新しい施設でした。スプリンクラーなど消防法に基づいた消防用設備も整備されていました。また、自衛消防組織が設置され、事業所の消防訓練において、消火訓練・避難訓練が定期に行われておりました。しかしながら、大規模火災にまで発展したのです。この点について、三芳町倉庫火災検討会報告書では、いくつかの課題があったとしており、要約すると次の3点になります。

①119番通報の遅れ

火災発見者は自ら初期消火を試みたものの、消火できずに結果として、119番通報したが、自動火災報知設備の鳴動から約7分が経過していました。なお、事業所の消防訓練において、消火訓練・避難訓練は定期に行っていたが、通報訓練は行われていなかったとのことです。

②消火栓設備の使用方法の失敗(理解不足)

初期消火において、屋外消火栓設備を使用した際、「ポンプの起動ボタンを押す」という動作が行われなかったことで、十分な放水量が得られていたとは言い難い状況であったと推定されています。また、事業所の消防訓練において、消火器(訓練用の水消火器)を用いた消火訓練は行われていたが、屋外消火栓設備・屋内消火栓設備を用いた消火訓練は行われていなかったとされています。

③防火シャッターの閉鎖障害

主要な幹線に直結して設置されているアナログ式感知器の周囲などにおいてショートが発生したことによって、多数の防火シャッターが正常に起動しないという現象が確認されました。また、火災後に行われた実況見分の際には、降下の途中でコンベヤや物品に阻まれたため、完全な区画の形成ができなかった防火シャッターも確認されました。防火シャッターと交差する配置となっているコンベヤには防火シャッターの降下と連動して作動し、交差部分を物理的に開放することで、降下する防火シャッターとの衝突を回避する(シャッター降下を妨げない)システムが備わっていたが、火災時には、連動システムが適切に作動しなかった事例が多数見受けられたとされています。
以上の課題を踏まえ、消防庁は、「大規模倉庫における火災の教訓」と題した消防訓練に関するリーフレットを作成しました。そのリーフレットにでは、次の3点を教訓とし、消防訓練の必要性と重要性を説いています。

教訓1 火災発見時は直ちに適切な通報
火災の発生場所や燃焼物などを具体的に想定して、ロールプレイング形式の模擬的な通報訓練を行い、火災発見時には躊躇することなく直ちに適切な119番通報を行うことができるようにすることが必要です。
教訓2 屋内消火栓設備又は屋外消火栓設備を用いた確実な初期消火
大量の段ボール等の可燃物があるところでは、延焼が速いため消火器だけでは消火できない場合がありますが、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備は消火能力が高く初期消火に有効ですので、これらを使って実際に放水する訓練が必要です。
教訓3 従業員全員が円滑に避難できることを確認する避難訓練
実際に棚やコンベヤ等が配置された状態で、防火シャッターが閉鎖するなど火災が発生した場合の具体的な状況を想定し、火災時に危険な状態になるまでの時間内に、従業員全員が避難できるように避難訓練を実施しましょう。

 埼玉県入間郡三芳町の倉庫火災をきっかけとして消防庁が作成したリーフレット「大規模倉庫における火災の教訓」の内容を紹介しました。これに対して、どのような感想を持たれるでしょうか。筆者は、「やはり基本の訓練が大事であり、その基本訓練を実践すること自体は決して難しいことではない。ただ、やるかやらないかが分かれ道なのだろう」と率直に感じました。

リーフレット「大規模倉庫における火災の教訓」

倉庫における基本的な防火対策

前項の教訓や倉庫において火災を誘発する恐れのある原因などを踏まえると、基本的な防火対策として、少なくとも次のことは実施する必要があると考えます。

①消防法等の法令遵守

既に紹介した大規模倉庫の法令違反の実態結果では、消防用設備等の違反が約3割、防火管理者の未届違反、消防計画の未届違反が2割近く、さらに消防訓練の未実施違反が1割近くあり、防火設備の閉鎖障害なしは約6割であったとされています。当時のデータであり、消防の指導等であり、これより改善がなされているとは思います。ただ、法令の基準を守ることは、最低限のことであり、防火対策のスタートラインであることを十分認識する必要があります。自社の倉庫において、遵守できているか常に確認を怠らないにようにすることが基本です。

②消防訓練の定期的な実施

上記①と重なりますが、避難訓練は特に重要です。倉庫は無窓階などもあるため、窓からの避難が困難な構造になっている施設が多くあり、建物内にコンベアやラック類などの物流設備機器が多数存在するため、避難経路が複雑になり、最短距離で移動できないことが想定されます。また、防火シャッターが閉鎖した後などは、「くぐり扉」を通るなど避難経路が通常と異なることもあります。実際の火災を想定した避難訓練の定期的な実施は非常に重要です。倉庫の場合、そこに働くスタッフが頻繁に入れ替わることも多いので、新しいスタッフが入ったら避難経路の確認は必ず行う必要があります。
また、埼玉県三芳町町の倉庫火災で課題になった通報訓練、屋外消火栓設備・屋内消火栓設備を用いた消火訓練も非常に重要です。特に消火栓設備がどんなに最新鋭で高い能力があっても、いざという時に使いこなせなかったら、何の意味もありません。こういった訓練が何よりも重要です。

③電気設備・機器の定期点検とメンテナンス

倉庫においては、照明、コンベヤなどに多くの電気を使用するため、配電盤などの電気設備を備えています。これらが経年劣化すると漏電やショートを起こし、火災の原因になります。また、電気コードは極度に曲げたり、巻かれたりしたままの使用やたこ足配線での使用で加熱して発火する恐れがあります。特に注意したいのは、「トラッキング現象」です。これは、コンセントに差しっぱなしのプラグに溜まったほこりに湿気などの水分が付着し、電気が流れて、炎が発生するという現象です。火気を直接扱わず、電気だから安心という理窟は成り立たないということです。定期的な設備の点検とメンテナンスが重要になります。

④自然発火対策

活性炭等の炭素粉末類は空気中にさらされた場合、空気中の各成分と吸着し、吸着熱が生ずるなど、物質の中には、酸化や空気中の水分と結びつくことで自然発火を引き起こす恐れのあるものがあります。このような物質を保管する際には、換気や温度、湿度などの徹底管理が求められます。また、塗料やワックスを拭き取った布、油が染み込んだ紙、養生に使ったシートなどを、山積みしたり、容器にまとめて入れたり、ビニール袋に入れたまま放置しておくと発火することがありますので、倉庫内にある物質の特性にも留意する必要があります。

⑤放火の対策

 火災全体の原因として多いのが放火です。また、既にご紹介したように倉庫でも放火による火災は発生しています。最低限、関係者以外の立ち入りを防止するセキュリティ、庫外に安易に可燃物を放置しないなどの対策が必要です。

⑥防火シャッターの下、非常口に物を置かない

 埼玉県三芳町町の倉庫火災でも、防火シャッターの閉鎖障害が報告されていますが、防火シャッターの下に物や物流機器などを置かないことが重要です。同様に非常口に物を置くようなことがないようよう注意する必要があります。

⑦喫煙対策

タバコの不始末の防止は言うまでもないことです。最近は、禁煙や分煙が浸透して喫煙場所も限定されています。その分、トイレや屋外の空きスペースなどで隠れて喫煙するようなことがないよう徹底することが必要かもしれません。

倉庫における基本的な防火対策

安全対策は足元から

ネットでは、南海トラフなどの巨大地震や富士山の噴火などが明日にも起こりそうな記事、書き込みをよく見かけます。そうしたことに対する意識や備えが重要であることは間違いありません。ただ、火災という極めて身近な災害についても改めて意識をし、備えをすることも必要なのではないでしょうか。とりわけ、物流で重要な役割を果たす倉庫内には、大勢の人が働いています。埼玉県三芳町町の倉庫火災では、あれだけの大規模火災でも“たまたま”犠牲者が出なかったと考えます。万一、次にこのような火災が発生して、犠牲者がゼロで収まる保証はどこにもありません。倉庫火災に関しては、何より火災を発生させないことが重要です。しかし、発生を完全に抑えることは難しいことも事実です。火災を起こさないための対策に合わせて、万一火災が発生してしまった際の対処、つまり、「大規模倉庫における火災の教訓」が掲げる訓練を実施しておくことは極めて重要と考えます。そして、その訓練の実施は決して難しいことはありません。明日にもできる内容です。訓練が人命を守ることにつながるということを倉庫会社の経営者、責任者は常に念頭において業務運営を行うことが重要と考えます。

おわりに

本稿において、実際の埼玉県三芳町町の倉庫火災などをもとに倉庫の火災対策について考えてきました。恐らく、何ら目新しい対策といったものは無かったと感じられる方が多かったと思います。どれも非常に基本的な内容で、小学生にもわかる内容です。一番重要なのは、「大規模倉庫における火災の教訓」にある「訓練していたことはできますが、訓練していないことはできません。この火災を教訓に、大規模倉庫における効果的な消防訓練を実施しましょう。」というフレーズにつきると筆者は思います。これを見てすぐに思い浮かんだのが、職場、駅、公共施設などに設置されているAED(自動体外式除細動器)です。これを使用しなければならない事態に遭遇した際、自身で正しく使用できるかと問われたら、現状では「ノー」です。教訓のフレーズはそういったことを明示していると感じました。そして、目新しい対策がないこと自体、倉庫の防火対策は基本的なことを実直に実施していくことしかない、逆に考えれば、それだけ難しい課題であることを示していると同時に感じた次第です。

(この記事は2023年5月8日時点の状況をもとに書かれました 。)

〖コラム〗 メザニンに注意!

メザニンは、建物の中二階のことで、倉庫においてはこのメザニンに特に留意する必要があります。
通常、倉庫は天井が高く、ネステナーやパレットラックを活用して天井近くまで積み上げていない倉庫の場合、保管物と天井までに無駄な空間が発生します。そこで、この空間を有効利用する際に考えられるのがメザニンです。しかし、メザニンはどこの倉庫にでも設置できるというものではなく、設置については、主に建築基準法や消防法の基準を満たさなければなりません。
建築基準法では、メザニンを設置するとフロアが1階分増えることになってしまうので、容積率などの問題が発生します。倉庫は最初の建設時点で最大の容積率で建築されていることが多く、その場合にメザニンを設置して増床すると建築基準法違反になることがあります。
また、消防法でもメザニンが階や増床と見なされる場合、倉庫内に屋内消火栓、防火シャッター、スプリンクラー、自動火災報知設備などの防火設備の増設が要求されるので、注意する必要があります。従って、メザニンが設置されている倉庫を借りる際も法令の基準を満たしているかをよく確認する必要があるのです。増床などの判断基準や解釈は簡単ではないので、設置の際は事前に関係省庁へ確認することがトラブルを防止するうえで非常に重要になります。
 なお、メザニンと同様に無届による増築や接続(屋上に木造倉庫を増築や雨に濡れるので木造の屋根(下屋)で建物を接続のケース)などによる消防法違反の例が紹介されている横須賀市消防局のパンフレット「重大な消防法令違反の大半は、無届による増築・接続、または用途変更で発生しています!」がありますので、そのURLを下記にご紹介しておきます。
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/7415/documents/cyuuikanki.pdf

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