【Logistics Report】MODEX 2018 視察レポート
MODEXは年に1度、アトランタかシカゴで交互に開催され、今年は4月9日から12日の4日間にわたってアトランタで開催されました。ちなみに来年はシカゴで「PROMAT」という名前で開催される予定です。
世界中のマテハンメーカー、ロジスティクス・ソフトウェアメーカー、フォワーダーなど約900社の物流関係の会社が、ジョージア・ワールド・コングレス・センター(約 23,000 ㎡)に集ってブースでの展示を行い、国内外からの多くの来場客と共にセミナー、ディスカッションを通じて情報交換を行いました。
中でも注目を集めていたのは、AIやIoTなどの技術を使った最新の物流機器です。AGV(自動搬送機)、自動倉庫、スマートグラスのデモを行なっているブースには多くの人が集まっていました。その展示機器のなかから、2つほど紹介いたします。
ケースローダー・アンローダーシステム
Bastian社の機械で、1時間に1,000ケースの貨物の積み下ろしをすることができるデバン/バンニング用の機械です。通常、パレタイズされていない輸入コンテナの貨物のデバン作業は、リフトマンと連携しながら複数名で行ないますが、この機械を使うことで省人化することができます。価格は1台16 ~ 20万ドル(約1,700 ~ 2,200万円)。無人で行なわれるデバン/バンニング作業のデモの様子をビデオ撮影する多くの人で賑わっていました。
写真1: Bastian社のケースローダー・アンローダーシステム
AGV(自動搬送機)
6 RIVER SYSTEMS社のロボット台車CHUCK(チャック)は、ピッキングエリアの通路を走行してピッカーを次にピックすべき商品棚の前まで誘導。タッチスクリーン画面に商品の画像や数量、IDデータなどを表示してピッキング指示を行うAGV(自動搬送機)です。作業実績を時間・ロケーション・動線と合わせてデジタルデータ化して「現場の見える化」ができます。この自動搬送機は、展示会のイノベーション・アワードのファイナリストに選出されていました。
写真2: 6 RIVER SYSTEMS社のCHUCK(チャック)
eフォワーダー「FLEXPORT」の台頭
今回出展した企業の中で私が注目したのは、「FLEXPORT」というeフォワーダーです。同社は2013年に設立されたベンチャー企業で、Webサイト上で発地と着地の港名/空港名と貨物情報(荷姿・重量・容積)を選択すると、海上と航空でのリードタイムと価格が表示される機能を持つダッシュボートの利便性が評価され、ここ数年大きく業績を伸ばしています。
FLEXPORTのダッシュボード画面
出所:FLEXPORT Website
設立当初は海上貨物が中心でしたが、ここ数年は航空貨物にも力を入れており、今年の4月からLA-香港間で自社のチャーター機による週2便の輸送を開始しました。Web上での見積もり、輸送予約、貨物追跡がスムーズにできる利便性の高いサービスで、大手のDHL、Kuehne + Nagelに挑んでいます。ブースの担当者にインタビューをしたところ、現在の従業員数は約600名で、アメリカ、香港、中国以外にフィリピン、ハンブルグ、アムステルダムにも拠点があり、今後は他のヨーロッパ諸国、南アフリカ、日本を含むアジアにもネットワークを拡大していく予定とのことです。
実はMODEXに参加する前に視察したLAの倉庫で、FLEXPORTのテープでラッピングされた大量のパレタイズされた貨物を見ており、彼らの勢いを直に感じる経験をしました。航空貨物のチャーター便による混載は利益率が高く、今後数年以内に彼らのようなeフォワーダーが多数台頭して、既存のフォワーダーも同様のサービスを展開していくことが予想されます。
写真3: 説明してくれたFLEXPORT社
サミュエル・テーラー氏
ロジスティクス業界における女性の雇用と熟練作業者の仕事の重要性
MODEXでは出展業者によるブースでの展示以外に様々なセミナー、パネルディスカッションも同時に開催され、「Women in Logistics」と「Why Dirty Jobs Matter」の2つのセッションでは、ロジスティクス業界が抱える課題である女性の雇用創出と熟練労働者の仕事の重要性について述べられていました。現在のアメリカにおける女性のトラック運転手の比率は約5%ですが、男性よりも事故が少なく、致命的な人身事故の発生比率が低い女性ドライバーは今後もっと増やしていくべきで、そのためには女性がもっと安心して働けるような労働環境を整えるとともに賃金も引き上げ、これまでとは違った募集広告をしていくことが必要という意見もありました。
どこの国でも物流業界における人手不足は深刻な問題となっており、AI、IoT、ブロックチェーンなどの最新技術では補えない仕事がまだ数多く存在していることも実感した次第です。