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「カイゼン」ではAI産業革命を物流企業が生き残れないのはなぜか?

「カイゼン」ではAI産業革命を物流企業が生き残れないのはなぜか?

カイゼンの本質は「現状を少しずつ手直しすること」にあります。これに対して、イノベーションの本質は「既存の枠組みを破壊し、新しい仕組みを構築すること」です。例えば、物流業界では、カイゼンは運送ルートの最適化や倉庫内作業の効率化を通じて、現状を少しずつ改良していく手法です。ピッキング順序の見直しや運転手の待ち時間削減など、現場の問題を解決し、全体の生産性を高めることがカイゼンの目標です。しかし、イノベーションは、完全自動運転車による輸配送やAI・ロボットを活用した完全自動倉庫の導入といった、従来の物流の仕組みそのものを根本的に変えるものです。こうした新技術により、輸配送のスピードが飛躍的に向上し、コストが大幅に削減されることで、物流業界全体が新しい姿へと変貌していくことになります。

イノベーションの他業界での事例

物流業界に限らず、イノベーションは多くの業界に根本的な変革をもたらしています。例えば、スマートフォンの登場はその一例です。かつて携帯電話は主に通話やメッセージ送信のために使用されていましたが、スマートフォンが登場したことで、それらの機能に加えてインターネットアクセス、アプリケーションの利用、さらにはモバイル決済や撮影機能までもが一台に集約されました。この変化により、従来の携帯電話市場は一気に時代遅れとなり、さらにコンピューター市場までもが再編されました。スマートフォンが人々の生活やビジネスのやり方を大きく変えたことは、イノベーションが既存のビジネスモデルをどのように破壊し、新たな市場や価値を生むかを示す象徴的な例です。

また、UberやAirbnbといったプラットフォームビジネスも、伝統的なタクシー業界やホテル業界を一変させました。彼らは物理的な資産を所有することなく、スマートフォンのアプリを通じて膨大なユーザーを繋げ、新しい形のサービスを提供しました。タクシーやホテルという固定的な枠組みを破壊し、個々の人々が自家用車を使ってタクシーサービスを提供したり、自宅の部屋を宿泊施設として貸し出すことを可能にしたのです。これにより、伝統的なビジネスモデルが変革され、ユーザーにとっても利便性と価格競争力のある選択肢が生まれました。

イノベーションの進行と物流業界

物流業界でも、このような大規模な変革が目前に迫っています。AIは驚異的な速度で進化し、ついには人間を超える知能を獲得しつつあります。そして、高度知能化AIを搭載した人型汎用ロボットや完全自動運転車が物流現場にまもなく導入されようとしています。このような技術革新によって、従来の人手による作業では到底達成できなかったレベルの効率性が実現されることになるでしょう。すなわち、物流業界は今、カイゼンでは太刀打ちできない「新しい次元」に移行しつつあるのです。これがAI産業革命と呼ばれる変化の一部であり、私たちは、従来の「カイゼン」手法ではもはや対応しきれない大きな変革に直面しているのです。

これからの物流業界は、イノベーションによる「破壊と再構築」を経て、新しい次元に進化していくことになります。この変革を前向きに捉え、高度知能化するAI、ロボット、完全自動運転車といった新しいテクノロジーを徹底的に研究し、新たな活用法やビジネスモデルを開発することが、次世代の競争力を維持するための鍵となるでしょう。「カイゼン」だけでは従来のプロセスやシステムを破壊し再構築することは不可能であり、AI産業革命という激動の時代において物流企業が生き残るためには「イノベーション」の手法を身につけ、駆使することが必須です。

イノベーションには明確な「方法」がある!

❶ 既存の前提を言語化し再検討する

イノベーションを行うためには、日常業務やビジネスの中で「これが当たり前」「これが正解」とされている前提をまず再検討することが重要です。例えば、物流業界における既存の前提を言語化すると「人手で行うのが最も効率的」という考え方が支配的であることが認識できます。では、この前提は今後もずっとそのままなのでしょうか。明らかなことは、まもなくAIの知能レベルが人間を超えるだろうと予測されていますので、AIやAIを搭載した高度知能化ロボットなどを活用することで人手に頼るよりもはるかに効率的になる可能性が高いということです。そうだとすると「人手で行うのが最も効率的」という先入観は破壊されるべき考え方であり、イノベーションを起こすためには「人手に頼らない物流業務の新しいやり方」についてあらゆる角度から再検討することが必要です。

❷ 多様な視点を取り入れる

イノベーションを促進するためには、通常の枠組みや視点にとらわれず、異なる業界や文化、バックグラウンドを持つ人々との交流が不可欠です。なぜなら、異なる環境で育まれた知識や経験は、既存の課題に対して新しい視点やアプローチをもたらすことが多いからです。異なる業界で成功しているアイデアや技術を物流業界に応用することで、これまで考えつかなかったような解決策が生まれる可能性が広がります。たとえば、IT業界で普及しているデジタルツールやビッグデータ分析の手法は、物流業界の需要予測や在庫管理に応用されています。データをリアルタイムで分析し、適切なタイミングで配送を最適化することで、従来の人間による手動管理では得られなかったレベルの効率化が可能となります。これにより、コスト削減やサービス品質の向上が実現します。異なる業界の技術やノウハウを積極的に取り入れることが、イノベーションを推進するための大きな鍵となるのです。

また、多様な文化的背景や異なる考え方を持つ人々とのアイデア交換も重要です。たとえば、多国籍企業やグローバルなプロジェクトチームでは、メンバーがそれぞれ異なる文化やビジネス習慣を持っています。このようなチーム内での議論やブレインストーミングは、物流業界の枠を超えた革新を生む可能性を秘めています。日本の物流企業がアジア市場に進出する際に、その地域特有の文化や消費者行動を理解するためには、現地の人々とのコラボレーションが欠かせません。多様な視点を持ち寄ることで、従来の考え方では見過ごされがちな問題点や、新たなビジネスチャンスが見つかることがよくあります。

さらに、企業内で部門を越えたチーム編成も、イノベーションを加速させる要素の一つです。通常、研究開発、マーケティング、営業などはそれぞれ異なる専門知識を持ち、それぞれの視点から課題を捉えます。この部門間のサイロ化を解消し、横断的なプロジェクトチームを作ることで、異なる視点や知識が融合し、より斬新なアイデアが生まれることが期待されます。

総じて、多様な視点を取り入れることは、業界の枠を超えた技術や知識、文化的な多様性を活用し、物流業界に新たな革新をもたらすための重要な要素です。従来の視点にとらわれず、さまざまなバックグラウンドを持つ人々との協力を進めることが、今後の競争力を高める上で不可欠です。

❸ 従来の枠組みを破壊する思考法「Breaking Legacy Thinking」

イノベーションを起こす上で欠かせないのが、従来の枠組みを破壊する思考法です。これは、単なる効率化やプロセスの改善ではなく、時にはこれまでの成功や慣例をすべて捨て去り、根本的に新しいアプローチを採用することを意味します。従来のビジネスモデルやシステムは、ある時点では有効だったかもしれませんが、テクノロジーや市場の変化が急速に進む現代では、それが大きな足かせになることもあります。このような時代にイノベーションを生み出すためには、破壊的な思考、つまり従来の枠組みにとらわれず新しい道を切り拓くための勇気が必要です。

例えば、物流業界においても従来の枠組みにとらわれず、新しい技術やビジネスモデルを取り入れることで劇的な変革が起こり得ます。これまでの物流は、人間がトラックを運転し、倉庫内で手作業によるピッキングが行われてきました。しかし、完全自動運転車やAIを活用した無人倉庫が登場しつつある今、これまでの人手による運送や倉庫管理という概念は過去のものとなる可能性があります。従来の物流企業はこの変革に対して抵抗を感じるかもしれませんが、成功するためには、新しい技術に対応し、従来のやり方を捨てる覚悟が必要です。

従来の枠組みを破壊する思考に慣れるためには、自社や業界の現在の状況を「ゼロベース」で再評価することが重要です。ゼロベース思考とは、これまでのプロセスや慣習を一旦すべてリセットし、何もないところから新しい仕組みを考え直す思考法です。たとえば、物流業界において、なぜ人が荷物を運ぶのか、なぜトラックが固定のルートを運行するのか、そもそもなぜ大規模な倉庫が必要なのか、といった問いを再考することが大切です。これにより、これまでの常識を打ち破る新しい解決策が見えてくるかもしれません。

次に、破壊的な思考を実践するためには、リスクを取ることを恐れない企業文化が必要です。従来の枠組みを破壊するには、これまでの成功パターンに固執せず、新しい挑戦をすることが不可欠です。たとえば、ある物流企業が従来の配送ネットワークをすべてデジタルプラットフォームに置き換え、AIを活用してリアルタイムで最適な配送ルートを決定する仕組みに切り替えたとします。このような劇的な変化は、失敗のリスクも伴いますが、成功すれば業界全体を変えるようなイノベーションにつながる可能性があります。

従来の枠組みを破壊することによって生まれた成功例として、前述したUberの登場が挙げられます。Uberは、タクシー業界の従来のビジネスモデルを根底から覆しました。既存のタクシー会社は、自社の車両や運転手を管理するという従来型の枠組みの中で業務を行っていましたが、Uberはそれをすべて打破し、スマートフォンのアプリを通じて個人が自家用車で乗客を運ぶという新しいモデルを構築しました。このような破壊的なアプローチが、業界全体に大きな変革をもたらしました。

また、Netflixも従来のエンターテインメント業界の枠組みを破壊した例です。かつてはビデオレンタルショップが主流でしたが、Netflixはビデオレンタル業をインターネットを通じたストリーミングサービスに置き換え、物理的なメディアを必要としない新しい視聴方法を提供しました。この結果、従来のビデオレンタルショップは急速に廃れ、Netflixのようなサービスが主流となりました。これも、従来の枠組みを破壊することで生まれた成功例の一つです。

最後に、従来の枠組みを破壊する思考法を身につけるためには、まず、きちんとした専門のワークショップである「Breaking Legacy Thinking Workshop」を受講していただくことが効果的です。その上で、日常的に新しいアイデアを試す環境を作ることが重要になります。小さな実験を繰り返し行い、失敗を恐れずに新しい方法を試してみることが、破壊的なイノベーションにつながるからです。組織全体でオープンな議論を行い、従来の方法にとらわれずに柔軟な思考を促進することが求められます。

従来の枠組みを破壊することは、リスクを伴う大胆な行動ですが、その先には大きな成長と革新が待っています。市場や技術の変化が加速するAI産業革命の時代において、物流企業が競合他社に先駆けて成功するためには、従来のやり方に固執せず、新しいアプローチを取り入れることがますます重要になっているといえます。

(この記事は2024年9月10日時点の状況をもとに書かれました。)

この記事の著者

◆出身地:鹿児島県鹿児島市 ◆血液型:A型
◆趣味:ドライブ、音楽、ディベート、歴史研究、科学技術研究

1980年 九州大学 法学部 卒業
【得意分野】
・DX戦略 ・物流AI化戦略 ・最新テクノロジーの調査・評価
※日本ディープラーニング協会 Deep Learning for GENERAL 2019 #2

2012年に脳機能分野のIT開発スタートアップを起業した際、多数の起業家たちと交流する機会がありました。様々な分野で夢を抱き技術を磨いている起業家と交流できたのは貴重な経験でした。この体験を通じて好奇心を忘れずチャレンジし続けることの大切さを学んだように思います。今興味をもっているのは、AI分野ではLLMなどの生成AI、宇宙開発分野ではSpaceX社のStarship構想、量子テクノロジー分野では光合成における量子コヒーレント状態の形成といったテーマです。凄まじい勢いで進化するテクノロジーにはいつも驚かされます。

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