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ホワイト物流とは

ホワイト物流とは

はじめに

今日、物流業界では、「ホワイト物流」推進運動が注目されています。ここでは、ホワイト物流の概要、「ホワイト物流」推進運動の取組事例を紹介し、物流業界におけるホワイト物流への期待について、取りまとめます。

ホワイト物流の概要

はじめに、ホワイト物流の概要について、整理します。

国土交通省によれば、「ホワイト物流」推進運動とは、深刻化が続くトラック運転手不足に対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的に、次の点に取り組む運動です。

  • ①トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化
  • ②女性や60代以上の運転者等も働きやすいより「ホワイト」な労働環境の実現

上記より、これらの運動は、物流事業者と荷主が連携し、相互に協力することが求められていることが、読み取れます。

また、「ホワイト物流」推進運動の背景として、トラック運転手を取り巻く環境におきましては、以下のような7つの課題が見られます。

  • ①トラック運転手不足。
  • ②トラック運転手の高齢化。
  • ③近年におけるトラック運賃の上昇。
  • ④トラック運転手の長時間労働。
  • ⑤トラック運転手の賃金は、全産業の平均と比較して低い傾向がみられる。
  • ⑥長時間の荷待ち時間が発生する場合がある。
  • ⑦作業負荷が高い荷役作業が発生する場合がある。

上記より、現状におきましては、トラック運転手の職場環境の厳しさが読み取れます。

図1に、ホワイト物流を推進する枠組みを示します。
同図より、ホワイト物流推進運動では、荷主企業、物流事業者だけでなく、国民も参加して、お相互に連携・協力・評価することが求められていることが読み取れます。特に、国民の位置付けとして、便利で快適な日常生活の維持に着目していることが特徴と言えます。

図1  ホワイト物流を推進する枠組み

図1  ホワイト物流を推進する枠組み
出所:国土交通省・経済産業省・農林水産省、「ホワイト物流」推進運動のご案内と参加のお願い、「ホワイト物流」推進運動に関する中央説明会用資料

次に、「ホワイト物流」推進運動の参加の流れについて、紹介します。

「ホワイト物流推進運動」の趣旨に賛同される荷主または物流事業者は、自主行動宣言を公表しています。

自主行動宣言様式のイメージを図2に示します。同図は、荷主企業や物流事業者等が自主時にホワイト物流推進運動の参加を表明する際に利用するひな型のイメージとなります。同図の上部には、一般に公表される賛同企業情報、賛同宣言内容が記載されます。同図の下部には、取組項目及び取組内容が記載され、これらの公表については任意となっています。

図2 自主行動宣言様式のイメージ

図2 自主行動宣言様式のイメージ
出所:国土交通省・経済産業省・農林水産省、「ホワイト物流」推進運動のご案内と参加のお願い、「ホワイト物流」推進運動に関する中央説明会用資料

「ホワイト物流」推進運動の取組事例

 
ここでは、ホワイト運動推進運動の取り組みに関する理解を深めるため、荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドラインの事例集から、代表的な二つ事例について、紹介します。

一つ目の事例として、「朝積みの時間の前倒し」と「荷物の区分け・整理する」ことによる荷積み時間の削減に関する事例について、紹介します。

発荷主企業は青森県の農業協同組合であり、運送事業者により、東京都内の青果市場へ野菜を運搬しています。

図3は、荷積み時間削減に関する事例のイメージです。
取り組み事例の概要として、現状では朝8時から荷積み作業を開始していたが、実証実験では1時間前倒しして朝7時より荷積み作業を開始することで、市場の混雑ピーク前に到着できるようにしました。

さらに、現状では配送先ごとに仕分けができていなかったが、実証実験では配送先毎に積み荷を仕分けて、配送先を明確化しました。
上記の取り組みによる効果は、1日当たりの拘束時間は17.7時間/日から15.5時間/日となり、2.2時間/日削減されました。また、1日当たりの最大の積荷時間は、3.9時間/日から2.9時間/日となり、1時間/日削減されました。

図3 荷積み時間削減に関する事例のイメージ

図3 荷積み時間削減に関する事例のイメージ
出所:厚生労働省・国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会、荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン事例集、4頁より一部抜粋。

2つ目の事例として、発注量平準化による取扱SKUの削減による附帯作業時間の短縮化に関する事例について、紹介します。

発荷主企業は大手食品メーカーであり、食料品を製造し、卸売業および小売業に対して販売しています。着荷主企業は、地元最大手の卸売り業者です。運送事業者は、発荷主における貨物の積込作業、輸送業務、着荷主における取卸し業務を行なっています。

図4に、改善前後における発注量平準化に関する事例のイメージを示します。同図の左側には改善前の取り組み、同図の右側には改善後の取り組みが記載されています。

改善の取り組み内容としては、以下の2つとなります。

  • ① 発注量の平準化として、改善前は安全在庫を考慮したシステムによる自動発注でした。改善後は、物流作業の効率化を考慮して、パレット単位、面単位の発注数量で自動発注できるように、発注方式を見直しました。
  • ② 最少単位発注に着目して、パレット単位(約10前後のSKU)、面単位(約8割のSKU)にまとめることで、荷扱いを容易にして、各作業の効率化に取り組みました。

なお、SKUとは、Stock Keeping Unitの略であり、受発注や在庫管理を行う際の最少管理単位のことです。

このような取り組みにより、改善の成果として、積込・取卸作業時間に関しては350ケースでは18.7%の時間短縮効果、850ケースでは13.8%の時間短縮効果が見られました。

図4 発注量平準化に関する事例のイメージ

図4 発注量平準化に関する事例のイメージ
出所:厚生労働省・国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会、荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン事例集、146頁より一部抜粋。

おわりに

本原稿では、ホワイト物流の概要、「ホワイト物流」推進運動の取組事例について、紹介しました。

トラックドライバーの取り巻く環境を改善するためには、荷主、物流事業者の相互の協力が不可欠となります。

そして、私たちの日常生活においても、少しだけ意識するだけで、物流分野への負荷を低減に、貢献することが可能です。

例えば、日常生活に欠かすことのできない社会インフラのひとつである宅配便の利用の際、配送日や配送時間帯の未指定、置き配の活用、可能な限り1回に集約するまとめ発注などは、個人的な工夫で、比較的容易に取り組めるものであると思われます。

また、引っ越しする際には、時期の調整が可能であるならば、春の繁忙時期を避けることで、引っ越し事業者における業務量の平準化に貢献できます。

将来的に、ホワイト物流推進運動の活動が社会に浸透して、トラック運転手の労働環境が向上することで、社会インフラの一つである物流ネットワークが持続的に運営管理されることが期待されます。

(この記事は2022年3月4日の情報をもとに書かれました。)

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