RFPの作成ポイントは、正しい骨子をベースに作成することです。特に、自社の置かれたビジネス環境から物流事業者へ期待したいことをきちんと記載することで、物流事業者としては、提案元の課題から将来の進むべき方向まで、深く踏み込んだ提案が可能となります。
簡易RFPは危険!?
物流業務の委託先を選定するために、RFP(Request For Proposal/提案依頼書)を作成されるケースも多いと思います。RFP作成のレベルは正直自由です。それがゆえに、簡易なRFPで委託業者を決定した場合、単なる料金競争で終わるケースもあります。これは提案依頼ではなく、見積り依頼です。
さらに、簡易なRFPでは、枝葉や例外的な業務を省略してしまい、物流事業者が把握していない業務として後から発覚することがあります。結果的に、自分たちが考えていた以上に委託費用が膨らんでしまうことも散見されます。このようなトラブルを防止するためにも、正しい骨子かつ一定のレベルでRFPを作成することが重要となります。
一定レベルのRFPの提示は、物流事業者は単なる一般的な物流提案に留まることなく、提案する顧客が置かれた環境を理解した上で、進むべき将来へ向けたオリジナルの提案を考えることができるようになります。
自社による作成が難しい場合には、RFPの作成を得意とするコンサル会社へ依頼することも選択肢のひとつです。RFPはパターンが決まっていますので、ベースとなる骨子さえ理解してしまえば、次回からはそれを応用して作成できます。図表1は、弊社で作成するRFPの骨子の例となります。
目指すべき方向性を明確にする
RFPのパーツの中で最も重要なのは、自社の意思である「目指すべき方向性」を明確にすることです。図表1の場合であれば、「統合方針(コンセプト)」となります。併せて、そこを目指すために、現在はどのようなことが課題となっているのかを示すことも必要です。目指すべき方向性と解決したい課題について、大型商品のB to C 輸配送におけるRFPの一部を具体的な例として挙げてみます。
<目指すべき方向性>
①大型商品の配送に特化した顧客サービスレベルの向上
②物流機能の外販によるスケールメリットの享受
③大手宅配事業者から脱却した全国ネットワークの構築
例えば、①の「大型品の配送に特化した顧客サービスレベルの向上」の解決したい課題として、再配達の防止を見据えた、ユーザービリティの高い方式による日時や時間帯指定が挙げられていたとします。さらに個人宅への持ち込みもあるためドライバーの清潔感・礼儀といった部分も課題となります。
②の「物流機能の外販によるスケールメリットの享受」であれば、今は親会社の商品が大半を占めており、外販が出来ていないことが課題となります。同様に③の「大手宅配事業者から脱却した全国ネットワークの構築」は、昨今の宅配クライシスでご存知の通り、選択肢が限られる状況下では宅配事業者からの値上げを飲まざるを得ないという課題があります。
このように解決したい課題と目指すべき方向性を明確にしておくことで、物流事業者が現時点で可能な提案と将来を見据えた計画としての提案の両面を盛り込むことが出来るようになります。
物流マップから詳細物量へ落とし込む
費用面では、取り扱い物量を正確に提示することも重要なポイントとなります。昨今のRFPの多くは、個建単価による提案です。万が一、物量に抜け漏れが生じてしまうと提案の前提条件が大きく崩れてしまいます。抜け漏れを防止する意味では、図表2のような物流マップを作成することも有効です。
提案の対象となる全体像を物流マップとして書き出すことで、全体の業務内容を俯瞰して見ることができます。その後、各詳細の情報を提示することで、物流事業者としても提案が行いやすくなります。例えば、図表2で全体を提示して、図表3のような都道府県別の物量(宅配)を提示します。年間物量を捉えた上で、提案すべき方面別の物量を検討することができます。
まとめ
物流事業者により良い提案を求めるのであれば、正しい骨子で具体的な提案依頼を行うことが重要です。初めて作成される場合は、少々戸惑うかもしれません。そのような場合は、物流事業者側の立場で考えてみて下さい。記載した自社の課題は第三者でも理解できるか?局所的ではなく、全体かつ将来まで見通した提案を行うための情報が提示されているか?提案依頼項目は回答しやすいように整理されているか?このように、最後に相手目線で提案しやすいRFPへ見直すことで、良い提案だけでなく、良きパートナーの獲得へとステップアップできるのではないでしょうか。