【Global Report】CESで見えた物流の未来展望②
先月号ではCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で展示されていたAI・IoT活用製品や技術についてご紹介しました。今月号では、CESに出展していた自動運転車についてご紹介いたします。
自動運転車の出展状況ですが、トヨタ、ホンダ、GM、フォードなどの自動車メーカーだけでなく、自動運転に必須となる部品(画像処理装置、通信モジュールなど)メーカーも多数出展し、自動運転の実現に向けて強気の宣伝を行っていました。ドイツのBMWは展示会場(ラスベガス・コンベンションセンター)の前にデモスペースを確保し、自動運転車の試乗サービスも実施していました。
写真1:BMWの試乗デモ
写真1は筆者が撮影した動画のキャプチャ画像ですが、運転席(アメリカなので左ハンドル)には誰もおらず、無人で車庫入れを行っている様子です。BMWのデモでは、数回にわたるバックでの切り返しができずに立ち往生していましたが、筆者もしょっちゅうそのような状況に陥りますし、自動運転車の方が間違いなく筆者よりも運転は上手いと思います(苦笑)。
試乗を行っていないメーカーも自社ブースに自動運転車の車体を置き、テスト走行のビデオを上映していました。どのメーカーも公道での実証実験を相当期間実施しており、技術的な問題はほぼなく、自動運転が“できる、できない”の議論はカンファレンスや各ブースでの情報交換時にも一切出てきませんでした。細かい定義は別にして、技術的には「もう実現している」という認識です。
写真2:NVIDIAブース
(NVIDIA・エヌビディアは自動運転の頭脳の一つ、画像処理装置(GPU:Graphics Processing Unit)のトップメーカーです。シリコンバレーのメーカーですが、自動運転でもやはりシリコンバレーがキーの技術供給源となっています。)
そのため、今回のCESでは運転時のコントロールや車内での過ごし方など、居住性、快適性の提案も多くみられました。例えば「家族4人で旅行に行く場合、4人がゲームで遊んでいる間に目的地に着く」「お腹がすいたら車に『15分内で行ける安くて評判の良いレストランを探して』などの指示を出して、車内のAIに予約させる」など。これらは「コネクテッド・カー」と呼ばれており、先月号で紹介したスマートホームの自動車版といって良いでしょう。その指示には音声認識技術が使われており、アマゾンのAI“アレクサ”も多くの自動車メーカーに採用されています。公共交通機関が発達している首都圏に住んでいると見過ごしがちですが、欧米や日本でも地方で生活している場合、車内で過ごす時間が長くなります。その時間を便利に、効率的に利用するためにAIなどの最新技術が活用されているのです。
CESでみた自動運転車は全て乗用車でしたが、技術自体はトラックにも応用可能ですし、車内の利便性や快適性の向上も、とくに長距離ドライバーにとっては有益でしょう。欧米のプレーヤーは「さっさと始めて、どんどん経験することによって失敗から学び、改良していく」という姿勢で開発に取り組んでおり、日本で聞いているよりも進んでいると感じました。会場で「攻めとるな~」と思わず唸ってしまいました。技術的な実現性を検証したら、その後、社会的・経済的な検証(社会が自動運転を受け入れるか、経済的にペイするのか等)も続くのでしょうが、安全面も含む技術的な蓄積が多いほど、それらの検証もスムーズになるでしょう。自動運転は思ったより早く実現すると確信した取材でした。