【Logistics Report】首都圏の低温物流施設動向、注目のポイント
東京ドーム約7.7個分、1 3県の低温物流施設の供給状況は、容積にして約960万㎥と言われています(日本冷蔵倉庫協会「全国冷蔵倉庫一覧2011」より)。なかでも特に注目されるのは、その18.1%を占める東扇島(川崎市)で、統計数字ではまだ出ていませんが、2012年から2013年までの2年間に、松岡、山手冷蔵、ニチレイによる大規模施設の新設が続き、37 万㎥が増強されています。このエリアには多くの低温物流施設が集まっているため、トラックの出入りも多く、輸送手配が容易であり、また一時的に貨物が増えた場合、近くの施設で保管場所を融通し合えるため、荷主企業にその利便性を非常に高く評価されています。
出典:「全国冷蔵倉庫一覧2011」日本冷蔵倉庫協会データより日通総合研究所作成
一方、低温物流施設に対する需要は、昔は冷凍肉の塊に代表される食品加工原料が主要な貨物でしたが、生産拠点の海外移転の影響を受け、最近は店頭に並ぶパッケージ食品やその一工程手前の加工品に変わってきています。このような製品は、少量多品種であり、小分けや包装等の流通加工が求められます。そのため、色々な食品に適した冷凍冷蔵温度帯に加え、梱包資材を保管するための常温施設など、様々な温度に対応できる施設への需要が高まっています。また、最近は食材のカットや簡単な調理など、物流施設に求められる庫内作業はますます多様になっています。こうした作業スタッフを確保するため、人材が採用しやすい立地であることも、重要な要素となっています。
今後、低温物流施設に関する気がかりな点として、フロンガス規制が挙げられます。2020年に、現在多くの低温物流施設で使用されているフロン系冷媒の生産が中止となります。これにより、規制に対応していない施設は、新しい冷媒に対応する改修や建替えが行われない限り、順次使用できなくなります。しかし、資金に余力の無い中小企業では、改修や建替えが進まないことも想定され、その場合、フロンガス規制施行の前後において、低温物流施設の供給が大きく減ることも予測されます。また、改修・新設されたとしても、建設コストが40年前と比べ大きく高騰しているため、新たな賃料が、荷主企業の想定賃料に合わないという恐れもあります。
低温物流施設は、冷却・保温に大規模な設備を要する一方で、荷主ニーズが様々に異なるために汎用的な施設とすることが難しく、初期投資が巨額になるという課題があります。この課題に対し、中古の一般倉庫を低温施設へ改修したり、マルチテナント型施設の一部を低温倉庫としたりするなど、一部では低温物流施設の建設コストを減らす取組みも行なわれており、今後の新たな取組みが期待されます。
低温物流施設の動向は、施設の新設・集積、施設機能や庫内作業に対する荷主ニーズの多様化、フロンガス規制の影響、と併せて建設コスト削減の取組みも注目のポイントと言えそうです。