受取拠点、ガソリンスタンド、有効活用
梅雨の蒸し暑さが続いていますが、皆さんは健やかにお過ごしでしょうか。
本記事では、私が2023年5月に故郷ベトナムに帰国した際に、日本留学の経験を重ね、物流について学んだからこそ、気づいた事を、独自の視点でレポートします。
2004年7月20日、東京では最高気温39.5℃という観測史上最も高い気温が記録されました。この東京の過去最高気温は、私の故郷(ベトナムの中部・クアンチ省)では夏の日常です。5月に帰国した際も、39℃以上の気温でした。当時、日本は20℃前後だったため、少し驚きましたが、新しい経験ができました。それでは、以下に帰国1日目と2日目をご紹介します。
東京から故郷への帰路:
出所:筆者作成
ベトナム地図
出所:BenThanh Touristのホームページ、筆者が加筆
ハノイで4時間15分待ち、その後国内線に乗ったため、実際には帰宅まで約14時間もかかりました。
通常、ホーチミンで乗り換えると国際線から国内線への移動には徒歩約5分かかりますが、ハノイではバスで15分かかりました。さらに、荷物も全て自分で運ばなければならず、非常に大変でした。(ベトナムの中部に行く方は、ホーチミンで乗り換えるか、ダナンまで直行便で行くことをおすすめします。)
写真1:荷物係が飛行機から荷物を取り出している様子
写真2:入国手続き
ベトナム統計局によると、ベトナムの国際観光再開により、2022年の海外観光客数は前年比23.3倍となりました。それでも、新型コロナウイルス感染症の流行がなかった2019年にと比べると79.7%減少しました。
写真3:出口
出口には、小型の自動車、タクシー、小さなバスがたくさん停まっていました。(ベトナムでは右側通行です。)道路を渡るのに車両が多く、ベトナム人の私でも少し怖いと感じました。
写真4:バス待ち
マスクを着用しているのは、外国人や外国から来た人がほとんどです。現地の人々は、あまりマスクをしていません。
5月上旬、ベトナムの新型コロナウイルス感染者数は前月と比べて急増し、5月6日には感染者数が3,400人近くに達しました。その後、5月中旬の数日間は感染者数が約2,000人で推移しましたが、5月26日時点のデータによれば、1日当たりの新規感染者数は減少し、約1,100人から1,400人になっていました。
(政府機関の2023年6月19日付文書番号231/TB-VPCPによると、新型コロナウイルス感染症予防対策国家指導委員会は新型コロナウイルス感染症の分類レベルをこれまでの「グループA」から「グループB」に引き下げることを決定しました。同時に、保健省に主な責任を負わせ、関連省庁と連携して法に基づいて流行の終息を検討し、発表するよう命じました。)
写真5:バス内
人が多かったため、最後に乗車した人の荷物はこのように置かれていました。バスを待っている間、気温は約39℃でしたので、無料バスのエアコンが最高でした。そして、重い荷物の出し入れはバスの運転手さんにやってもらいましたので、大変助かりましたが、申し訳ない気持ちもありました。
やっと国内線に到着しました。荷物を預けて一周回ってみると、日本の空港にはないものを発見しました。
写真6:荷物ラッピング機
それは、スーツケースと中身を保護するために、ほとんどの乗客がここでラッピングするのです。サイズに関係なく、一つ363円くらいです。
空港で4時間もあるので、カメラを持って、ぼーっとしている私を見つけた掃除人から挨拶されました。「新聞記者ですか?」と聞かれたので、私は「いいえ、学生です。ちょっと写真を撮ってもいいですか?後でブログに書く予定なので…」と答えました。すると、おじさんは「オッケー!いい笑顔するから、撮ってね」と快く了承してくれました。
写真7:ノイバイ空港国内線 掃除人
とても素敵な笑顔でした。
フエ省にあるフバイ国際空港で降りると、(20時頃)暗くなりましたので、フエで一泊することにしました。
今回はいつもと違って、色々なことを知りたくて家族に内緒で帰国したので、ややボロボロな16人乗りのバスにしました。
知り合いに頼んでバスを予約してもらい、バスの運転手さんが迎えに来てくれました。約5分後には国道で同じグループのバスに乗り換えました。でも、フエ省からクアンチ省までの道のりは直行ではなく、バス停やガソリンスタンド、国道の交差点などで停車し、乗客や荷物を受けたり、下ろしたりしました。
16人乗りのマクロバスですが、乗客数は7人しかおらず、バスの後半部分は荷物がいっぱいでした。私の勝手ですが、これを「荷物と人の混載バス」と名付けました。
確かに、積載率は直接物流コストに反映されるのでコスト削減の観点から有益な手段かもしれませんが、ベトナムの法律ではバスで貨物を運ぶことは禁止されていますので、そのような方法を採用することは法的に許容されていません。
荷物は60〜160サイズで、約20個ありました。驚いたことは、サイズに関係なく送料が一律で1個当たり約310円だったことです。荷物には受取人の携帯番号や住所が書かれており、宅配ではなく、近くになったら荷物に書かれた携帯番号に電話して、バスが通る国道の交差点などで荷物を受け取り、料金を支払うという方法でした。直接受け取れない場合は、近くのガソリンスタンドで荷物を受け取ることになります。バスの運転手さんは「サイズと個数に関係なく、一度ガソリンスタンドに荷物を預けたら、60円をガソリンスタンドのスタッフに支払う」と言っていました。
確かに、日本の方から見ると、ベトナムのこのようなサービスはいい加減だと感じるかもしれません。しかし、逆にベトナム人から見ると、日本のサービスは「時にはやりすぎではないか」と思う人も少なくありません。私自身、日本に5年以上住んでいる経験から、日本のサービスは素晴らしいと同時に、時にはやりすぎだと感じることもあります。例えば、商品の中身に問題はないのにもかかわらず、入荷検品段階で箱にわずかなキズがあるだけで廃棄されるという事例などです。
写真8:ベトナムのガソリンスタンド(出典:Chinh Sach Phap Luat Moi)
(ベトナム国営の石油元売り最大手ベトナム石油グループ:ペトロリメックス)
ベトナムの地方地域には郵便局の数がまだ十分ではなく、アクセスの困難な状況が続いています。知り合いなどに聞いてみたら「多くの郵便局は大きな道(国道など)に立地されて、地方の人が郵便局まで行くと危なく、不便なのだ。また、郵便局で送ると、手続きが面倒くさい。そのため、多くの人々はバスや国道の交差点、ガソリンスタンドなどを利用して荷物の送受を行っている。」と答えてくれました。
将来的には、ベトナムにおいてガソリンスタンドが正規の荷物受取拠点として発展する可能性もあると思います。これにより、地方の人々もより安全かつ迅速に荷物を送受することができるでしょう。
また、法律は社会のニーズや状況に合わせて変化することがあります。そのため、「荷物と人の混載バス」が将来的に法律上で認められる可能性もあると考えられます。
以上のベトナム物流事情をきっかけに、日本のことも少し触れると…
日本国内でも、ガソリンスタンドを配送拠点や受取拠点として活用する取り組みが進んでいます。
2023年1月6日の日本経済新聞に掲載された記事「三菱商事とENEOS、ガソリンスタンドを拠点とした配送効率化事業の推進を目的とし合弁会社を設立」は興味深いものです。ENEOSの全国12,000カ所超のガソリンスタンド(サービスステーション)ネットワークを荷物の一時保管かつ最終配送拠点として活用することで、最終配送拠点から配送先までの区間であるラストワンマイルを短縮し、配送の効率化を目指すという計画が発表されました。
(SS:サービスステーション、JV:合弁会社、LOM:ラストワンマイル)
図1:日本経済新聞 2023年1月6日 『三菱商事とENEOS、ガソリンスタンドを拠点とした配送効率化事業の推進を目的とし合弁会社を設立』
また、同新聞社は6月2日に「送料無料表示の変更要請へ 政府、物流2024年問題で」という記事でも、コンビニエンスストアやガソリンスタンドでの受け取りなどへの財政支援策を用意し、改善を促すということが掲載されました。
やはり、物流業界の問題解決に向けて、ガソリンスタンドの有効活用という動きがみられるようになりました。また、ほかの理由は…
2022年3月末時点で、日本の給油所総数は28,475店であり、減少傾向にあります。
図2:資源エネルギー庁の令和4年7月29日「令和3年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」の集計結果 より作成
経済産業省の令和5年3月31日に発表された「2023~2027年度石油製品需要見通し」によると、2022年から2027年までの予測では、燃料油全体(電力用C重油を除く)の年平均で1.1%の減少が見込まれており、全体では5.4%の減少が予想されています(図3参照)。
図3:経済産業省 令和5年3月31日 『2023~2027年度石油製品需要見通し(案)』より
ガソリンが不要な時代の到来や世界的なEVシフトなど、石油元売り各社は石油事業からの転換を迫られています。確かに新たなエネルギーと付加価値を提供できれば、脱炭素時代においてもビジネスチャンスを見出せるでしょう。この配送ネットワークや受取拠点も例外ではありません。
さらに、政府は2035年までに新車販売をすべて電動化する方針を掲げており、ガソリンスタンド以外にも充電スタンドを配送ネットワークや受取拠点として活用できれば、将来的に明るい展望が広がると考えられます。したがって、ガソリンスタンドや充電スタンドを全国的に配送ネットワークや受取拠点として活用するためには、政府の積極的な支援が必要です。
ここまで書いて、改めて「やはり、共に生きる時代が近づいてきている」としみじみと感じました。今後は、より良い社会を築くためには、事業者間の協力だけでなく、荷主、配送業者、消費者といった利害関係者も共同で協力することが重要だと思います。
今回はいつもと違うルートや帰り方をすることで面白いことを発見できました。そして、最後に日本の現状も少し触れたことで、ベトナムと日本では荷物の送受において、より柔軟な対応が求められました。また、トラック輸送能力不足とエネルギー転換の時代が同時に訪れていることは、共同・協力社会を築く契機となる可能性を私は感じました。
引き続き、ベトナムの社会や物流について興味深い情報をお伝えできればと思います。
次回もお楽しみにしていてください。
写真は8以外全て、筆者撮影
(この記事は2023年6月28日時点の状況をもとに書かれました。)